Kカルチャーの米国征服? Jカルチャーの逆襲が始まった(下)【朝鮮日報・寄稿】

 『君たちはどう生きるか』も同様だ。宮崎駿は、既に世界的に尊敬されている芸術家だ。それでも、米国ボックスオフィスで1位になるほどの大衆的成功を収めたことはない。過去最高のヒット作は、2002年に北米で公開されて1520万ドル(約21億6000万円)、韓国ウォンでいうと約200億ウォンを稼いだ『千と千尋の神隠し』だった。『君たちはどう生きるか』は、過去作のパターンを超えた。限られた一部の劇場を皮切りに長期上映で興行を続けるのではなく、1週目におよそ2000館の劇場で同時に観客を迎えるという、ブロックバスター公開方式を選んだのだ。

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 これもまた『ゴジラ-1.0』と同じく、日本サブカルの逆襲だ。日本のアニメーションは、日本の外に出た瞬間、大衆文化というよりマニア文化になっていた。大の大人がボーッと漫画なんか見てるのか、と言われてしまうのは韓国だけの話ではない。どこも同じだ。既に述べたとおり、サブカルは長く続けばメインストリームになる。ジェームズ・キャメロンのような監督が、1980年代から日本アニメの影響をもろに受けた大作映画を作ってきて、既に半世紀。ネットフリックスが日本漫画を原作にした諸作品を作り始めたことは、新たな転機になった。韓国では韓国人の成功事例にばかり注目するが、その間、日本のネットフリックスが生んだアニメ作品は韓国ドラマに劣らぬ成功を収め、新たなファン層を広げてきた。2023年にネットフリックスが実写で制作した『ONE PIECE』が圧倒的な成功を収めた点も、意味深長だ。今や日本のアニメーションは、米国で単に公開するだけでも、以前とは異なる大衆的地位を占める可能性が高い。

 韓国はどのように対抗すべきだろうか。この記事を読んでいる読者の中には、文化に対決など、どこにあるのかと不快に思う方もいらっしゃるかもしれない。韓日文化商品の米国における収益を韓国ウォンに換算までして、民族的・経済的価値にばかり没頭しているのではないか-と舌打ちする方も、確かにいらっしゃるだろう。どうしたものか。もともと、韓国人がそうなのだ。ラテン・ミュージックがKポップよりも米国市場で強力に浮上しているという話はそのまま聞き流すのに、日本の大衆文化が韓国を上回るという話を聞くと、胸のどこかに潜んでいた妙な愛国心のようなものが無性に出てきて、人をちょっとおかしくするところがある。もともと隣り合って国境を接している国同士は、全てそうだ。英国とフランス、ギリシャとトルコ、ブラジルとアルゼンチンが、死ぬほど相手側をけん制していることを一度考えてみてほしい。そして文化とは、それほど厳粛で大したものなのか。文化も、国境を越えたらオリンピックになる。

 大衆文化世界市場における韓日戦が本格的に始まった。それぞれ異なるジャンルを武器にしているから安心だとでも? 2023年を振り返って、私の気がかりはこれだ。半世紀にわたって既に多数のファン層を従えた多様なIP(Intellectual Property/知的財産)を保有している、日本の大衆文化の倉庫と同じくらいに、韓国の大衆文化の倉庫は十分だろうか? もしや、伝統ある金持ちの逆襲が始まっているのではないか? この問いに対する、より正確な答えは、2024年にクリエイターたちから聞くことができるだろう。君たちはどう創るか。

キム・ドフン(文化コラムニスト)

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