在日3世で柔道元韓国代表の安昌林 「五輪金メダリストを育てたい」

【ソウル聯合ニュース】「在日同胞として太極旗(韓国の国旗)を背負って走り続けた8年間は私の人生の中で最も輝き、価値ある経験でした。韓国代表は引退しましたがコーチとして後輩たちが五輪で金メダルを獲得できるよう力いっぱいサポートしようと思います」――。

 東京五輪柔道男子銅メダリストで慶尚北道体育会所属柔道コーチの安昌林(アン・チャンリム)氏は聯合ニュースのインタビューに応じ、「母国から多くのものを受け取ったので、これからはスポーツに励む多くの在日同胞の後輩たちに夢と希望を与えることに集中したい」と指導者としての目標を語った。

 在日韓国人3世の安氏はこのほど在外同胞庁の広報映像に出演し、在日同胞の生き方や韓国代表として活躍した経験を紹介した。

 安氏は京都で生まれ育ち、空手道場を営む父の影響で6歳の時に空手と柔道に入門した。空手は向いていなかったため柔道に専念し、筑波大2年生だった2013年に全日本学生柔道体重別選手権大会で優勝した。その後、大学の監督から日本代表を目指すためには帰化するよう勧められたが断り、翌14年に韓国に渡り、柔道の名門・竜仁大に編入した。

 韓国籍だったため日本代表選考会に出られず、出場試合数が年に1~2回だったため試合に出たいという気持ちが強かったという。祖父の時代から「朝鮮人」だと差別されながらも韓国籍を守ってきた安氏は「日本に帰化する考えはなく、むしろ韓国での選手生活に挑戦することになりました」と振り返った。

 14年に韓国の国内代表選抜戦で3位になり、代表入りを果たした。世界選手権では15年と17年に銅メダルを獲得し、18年に初優勝した。16年のリオデジャネイロ五輪では3回戦で敗退し、苦杯をなめたが、21年の東京五輪で銅メダルに輝いた。同年に韓国代表を引退した。

 目標だった五輪での金メダル獲得は達成できなかったが、後輩を育成するという新たな目標に挑戦している。「在日同胞の後輩たちの手本となるようコーチ生活だけでなく全ての面で努力する姿勢を堅持していきます」と覚悟を語った。

 安氏は母国に来た当時について「日本で差別を受けたときは韓国人としてのアイデンティティーを持ち立ち向かってきたが、母国で差別を受けた時はアイデンティティーを否定されたように感じられ辛かった」と振り返る。単一民族主義が強く、他民族に対する排他主義が強い日本で生きてきた在日同胞に対しもう少し理解を持って接してほしいと訴えた。

 日本と韓国の「境界人」として生きてきた安氏は10年にわたり母国で生活しながら韓民族としての所属感と自身のルーツに対する意識がさらに強まった。「より多くの次世代の在日同胞が母国を経験する機会があればと思います」と願った。

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