まだ公認候補も決まってないのに…韓国総選挙「ディープフェイク」詐欺、19日間で129件摘発【2月20日付社説】

 韓国の中央選挙管理委員会によると、来たる4月の総選挙を前に、虚偽動画・虚偽音声など「AIディープフェイク」を利用した違法掲示物を既に129件も摘発したという。19日間監視した結果がこれだ。選管が摘発したディープフェイクは、相手候補が出ている動画を巧みに操作して発言の一部を歪曲(わいきょく)したり、一から虚偽動画を作り上げたりしてSNS(交流サイト)でばらまいたものがほとんどだった。注意して細かく見ても、候補が問題の発言をしたかのようにだまされてしまうほどだ。2022年の地方選挙当時、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が保守系与党「国民の力」に所属する慶尚南道地域の特定候補を支持しているかのようなフェイク動画が出回ったが、今回これに類するものも摘発されたという。

【写真】AIがつくったフェイク動画「李康仁をバカにした日本人記者に反論するエムバペ」

 選管が70人の職員を投入して削除したディープフェイク129件は、全て独自モニタリングを通して把握したものだ。選管が構築したディープフェイク監視システムは民間よりも遅れていて、人員の面でも限界があり、今回摘発されていない総選挙関連のディープフェイクはずっと多いということもあり得る。

 グーグルやオープンAIなど20のグローバル・ビッグデータ企業は、ディープフェイクが選挙の公正性を阻害しないように「連合軍」を結成して対応することとした。これは、ディープフェイクの深刻さを示すものだ。「2024年選挙AI欺瞞(ぎまん)的使用防止技術協約(Tech Accord to Combat Deceptive Use of AI in 2024 Elections)」を結んだこれらの企業は、AIコンテンツのリスク緩和のための技術開発と拡散防止の努力を共に進めることとした。

 一方、ネイバー・カカオトークなど韓国国内の大手テック企業は、積極的なディープフェイク防止には乗り出していない。選管から通知が入ってきたときのみ処理するという立場だ。これらの企業は事実上、韓国インターネットにおいて独占・寡占的地位を有していながら、公益のために乗り出すべきときには消極的な態度を見せる。今回の総選挙がディープフェイクの歪曲された情報に影響を受けないよう、選管はこれらのテック企業との協力システムを構築する必要がある。

 世論調査を歪曲して拡散する違法行為も相次いでいる。中央選挙世論調査審議委は、与野党候補間の世論調査、党内予備選関連の世論調査などを捏造(ねつぞう)した犯罪5件を捜査機関に告発した。予備選通過のため、世論調査電話への回答時にうその年齢を回答するよう誘導する書き込みをSNSのグループチャットに行った人物も摘発された。デジタル技術の発展が、今や選挙を脅かし始めたといえる。選管委と関連企業は大きな責任意識を持たなければならない。

 公正な世論に基づいた総選挙が保障されなければ、民主主義が後退するのはもちろん、耐え難い混乱が韓国社会を襲うことになるだろう。

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