ソウル市鍾路区安国洞で「韓屋体験サリの家」(体験サリはホームステイの意)を運営するパクさん(43)は最近、驚くような経験をした。昨年11月18日に鍾路区桂洞で「韓屋体験サリの家」を運営するチョさん(44)が「うちは満室だから、そちらにお客さんを送る」と言って、済州島からやって来た団体客25人を紹介された。

 3日間の宿泊で、パクさんが観光客たちに請求した宿泊費は85万ウォン(約5万7000円)。ところがこれらの観光客から手渡された封筒には120万ウォン(約8万円)という数字が書かれてあった。不審に思い、パクさんが観光客に聞いたところ「宿泊費が120万ウォンで、契約金30万ウォン(約2万円)を先に支払い、残りをこの宿で支払うようチョさんに言われた」という。つまり、チョさんが韓屋体験に来た観光客を相手に「不当な料金」を受け取っていたわけだ。

 これを受け鍾路区が調査したところ、チョさんは昨年末から桂洞で韓屋を借り、「韓屋体験サリの家」を始めた。知人を通じて多くの観光客を呼び込み、安国洞や三清洞、桂洞など周辺の韓屋体験サリの家に「客を紹介するから紹介料をよこせ」と要求していたことが分かった。鍾路区観光産業課のヤン・ヨンフン主務官は「現在、何カ所の宿と取引していたのか、正確な被害状況を調べている。これらの宿の経営者の中には、直接紹介料を支払わなくても客引きができていたことなどから、水面下で取引が行われていたようだ」と話している。問題は、これまで実際よりも高い料金を支払って韓屋体験を行っていた観光客が数多くいるという点だ。

 鍾路区の関係者は「実際に経営者たちの間ではこのような“不当な取引”が頻繁に行われていると話しており、詳しい状況を確認中だ」としながらも、「何の申請もなく行われた取引であるため、全貌がつかみにくい上、法による規制も大した効果がない」と説明した。韓屋体験サリの家は、2009年の改定を受け、観光振興法に基づく法的根拠が付与されたものの、「宿泊業」ではなく「観光便宜施設業」に分類されている。従って、衛生管理や宿泊料金について別途の取り締まりを行う権限がないほか、免許取消もできない状況だという。ただし、区で別途に定めた条例によって「基準価格を超えた過度な利用料金を要求した場合」については、営業停止などの行政処分を下すことができる。鍾路区は、これを取り締まることができる関連法をまとめるよう、文化体育観光部に要請する方針だ。鍾路区観光産業課のチョ・ヘジョン課長は「韓屋体験サリの家を利用する観光客は、ホームページや鍾路区に直接問い合わせるのが、ぼったくりの被害に遭わない安全な道」としている。

 「韓屋体験サリ」は、鍾路区が韓国の伝統文化を広め、地域の経済を活性化するための一環として、北村韓屋村の韓屋を公開し、一昨年5月から外国人や地方の観光客を対象に韓屋を体験させる事業だ。体験サリは英語の「ホームステイ」に該当する。この事業を始めたきっかけについて、鍾路区側は「外国人観光客は増えているが、宿泊施設の数には限りがあるため、宿泊を兼ねた体験プログラムを開始した」と説明している。

 昨年11月に北村韓屋村の韓屋1266世帯のうち47世帯が「韓屋体験サリの家」に登録され、観光客を受け入れている。正式な宿泊業者ではなく、料金は1人当たり最高で10万ウォン(約6700円)、通常は5万-7万ウォン(約3400-4700円)、団体客は4万-5万ウォン(約2700-3400円)程度。海外や地方から来る観光客が、韓屋体験サリを利用する場合は、鍾路区に直接電話するか、ホームページ(homestay.jongno. go.kr)で詳しい情報を確認することが望ましい。

 しかし、一部の韓屋の経営者は、韓屋体験サリの家のホームページやブログ、または個人的な人脈を通じて直接観光客を誘致しており、チョさんのように宿泊できなかった観光客を他の宿に紹介することで手数料を受け取る手口もいまだ横行している。

 韓屋体験サリの家は、口コミで一昨年1万2708人(うち外国人は1万496人)が利用したほか、今年上半期には9780人が訪問した。ある韓屋の経営者は「こうした事実が外部に知られるのはわれわれにとっても悪影響だが、今回のことをきっかけに浄化されるべきだと思う」と話した。

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