韓国のガールズグループ「TWICE」のメンバーで台湾出身のツウィ(周子瑜)さん(16)が韓国のテレビ番組で台湾の国旗(青天白日満地紅旗)を振り、中国への謝罪に追い込まれた事件が中台関係に波紋を呼んだ。

 台湾初の女性総統に選ばれた蔡英文・民進党主席(60)は16日夜、勝利宣言の中で今回の事件に触れ、「国民がアイデンティティーに関して謝る必要がないように努力したい」「圧殺は両岸(中台)関係の安定を破壊する」などと警告した。

 一方、中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)は17日、「一部の政治勢力が個別の事件を利用し、両岸の民衆の感情を切り離そうとしていることを警戒すべきだ」と指摘した。中台ではインターネット上でツウィに関する検索が増えた。中国版ツイッターの微博(ウェイボー)では「ツウィ」「蔡英文」に関する検索が一時正常にできなくなった。

 蔡英文氏は記者会見で、「韓国を拠点に活動している台湾の16歳の女性芸能人が中華民国国旗を持って画面に登場したがために、非難を浴びた。この事件は、党派を超えて多くの台湾人を憤らせた。内外で言動と態度を一致させるということを、次期中華民国総統の私の最も重要な責務なのだと、改めて認識いたしました。事件はこの国を団結させ、強く大きくしていくことが次期中華民国総統である私の最も重要な責務なのだと改めて認識した」と述べた。

 台湾紙聯合報は、ツウィ事件が蔡英文氏の得票率を1-2%上昇させたと分析した。

 今回の事件は今月8日、台湾独立に反対する台湾出身の歌手、黄安(53)がインターネット上で取り上げたことをきっかけに騒動となった。中国のネットユーザーはツウィを「台湾独立支持ではないか」と非難。中国当局はツウィの所属事務所JYPエンターテインメントによる中国での活動に制約を加えた。結局、ツウィとJYPのパク・チンヨン代表は15日までに中国に謝罪。ツウィは「中国は一つしかない。私は一貫して中国人であることを誇らしく思う」と話し、深々と頭を下げた。中国紙・環球時報は「台湾独立勢力に対する中国ネットユーザーの勝利だ」と伝えた。

 これに対し、台湾では怒りが爆発した。ある台湾人女性はツウィの謝罪映像を見て、「IS(イスラム国)が人質を殺害する前に撮影した映像みたいだ。台湾は絶対に中国の属国ではない」と話した。

 台湾の一部カラオケ店は騒ぎを起こした黄安の曲の提供を取りやめる方針だ。24日に台北市で開かれる「黄安糾弾」「ツウィ支持」のデモに参加するというネットユーザーは1万人を超えた。黄安は来月3日に台湾で記者会見を開くと表明したが、台湾人からは黄安の台湾入りに反対している。

 JYPエンターテインメントのウェブサイトは同日、サイバー攻撃を受けて接続できなくなった。台湾紙タイペイ・タイムズによると、台湾にオンラインファッションメディア「ジャスキー」は、ツウィのマネジメント権をJYPから最高1億台湾元(約3億4900万円)で買い取ると提案した。

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