米国のオバマ大統領は27日、1945年8月6日に原子爆弾が投下された広島市を現職の米国大統領としてはじめて訪問する。先月11日には米国のケリー国務長官も広島市の平和記念公園を訪れ、原爆の犠牲者慰霊碑に献花した。米国政府の2人のトップによる広島訪問は、日本政府による強い要請を米国が受け入れることで実現した。

 ケリー国務長官は広島訪問前「強固な米日関係、米日両国が共有する友愛、堅固な米日同盟を改めて誓いたい」と述べた。同行した日本の岸田外相は「今日は歴史的な日だ」と述べ、ケリー氏の参拝に大きな意味を付与した。ホワイトハウスはオバマ大統領による広島訪問について「第2次大戦中に犠牲となった全ての無辜な人たちを追悼するため」と説明した。日本の安倍首相は「米日両国が共に原爆の犠牲者を弔う大きな機会としたい」と語り、その言葉に「被爆地から核兵器のない世界に向けた決意を世界に発信することは、次の世代にとっても大きな意味のあること」という解釈を付け加えた。

 原子爆弾が投下された地点は「グラウンド・ゼロ」と呼ばれる。広島では強化コンクリートで建設されたいくつかの建物が、このグラウンド・ゼロにおける爆発と爆風に耐えて倒壊しなかった。日本政府はその中の一つに「平和記念館」という名称をつけ、1996年にユネスコの世界文化遺産に申請した。当時、これに反対した国の中心は米国と中国だった。オバマ大統領と安倍首相はこの建物の前に立ち、核兵器のない世界というメッセージを発信する計画だという。

 オバマ大統領の広島訪問というニュースに接し「歴史とは『今の観点』から常に書き換えられるもの」という言葉の重みを実感した。「今の観点」とは「現在の利害関係」によって変わってくる。「パワーバランス」が変われば「利害関係」もそれに伴って変わる。これは国際政治を動かす「鉄の法則」だ。

 米国はその国内事情においてかつてのような余裕はもうない。大統領選挙では暴言王トランプ氏の勢いが今も衰えていないが、これは米国における真実の一部を反映している。中国は今や「光を隠して時を待つ『韜光養晦』(とうこうようかい)」は捨てた。日本国民は中国を侵略した過去故に、中国の脅威を切実に感じている。これらいくつもの事情が重なり合うことで、日本では安倍長期政権が現実となりつつある。

 あまりにも自明な事実は簡単に忘れ去られる。米国、中国、日本、ロシアに囲まれた韓半島(朝鮮半島)の地政学的位置がまさにそれだ。米国、中国、日本は世界第1、第2、第3の経済・軍事大国であり、かつての勢いが失われたとはいえ、ロシアも世界第4位の軍事大国だ。韓半島以外に世界でこのような国に囲まれた国や地域はない。あえて比較するとすればイスラエルだろうか。この韓半島が抱える事情は亡国の悲運に苦しんだ100年前と何も変わっていない。しかも韓半島の北半分にはすでにさびついた感のある北朝鮮が、核兵器とミサイルを使った危険な火遊びを今も続けている。

 大韓民国では年寄りも韓半島の地政学的位置について語ることはない。そのようなことを口にして「ぼけた」と言われたくないからだ。多くの知識を持つはずの知識人も、また愚かな政治家たちもこの点では全く同じだ。「地政学」という言葉を使うこと自体が「時代遅れの人間である証拠」とみなされるからだ。選挙の票に左右される政党も事情は変わらない。軽々しいことを言えば「安全保障商業主義」「政略的安全保障」などと攻撃され、票を失ってしまうのが恐ろしい。最近は「韓半島の地政学的位置」という言葉を聞いたことさえない若者も多い。

 このような時代の流れに押され、世界の中で大韓民国が置かれた事情や立場を読み取る目は完全に退化してしまった。外交・安全保障・国防・経済・福祉・教育など全ての分野において、ひどい近視の人間が眼鏡を失った時のように、手探りで道に迷い、時を逃してさまよっている。今回の「広島事態」は原子爆弾を落とした国と落とされた国、そして宣戦布告なしに奇襲攻撃を行った国と奇襲を受けた国による政治ショーだ。韓国はそのステージのすぐ下で質問のために手を上げ「オバマ大統領が広島を訪問し、追悼する犠牲者の中に韓国人も含まれますか」と尋ねることしかできない立場になってしまった。世界情勢を読み取る目が衰えれば、世界における変化のスピードを読み取り、それについて行くのに必要な時間感覚もマヒしてしまうのだ。

 韓国は広島における平和ショーの部外者ではない。広島における原爆の犠牲者16万人のうち3万人は強制徴用され、あるいは飢えから逃れるため玄界灘を渡った当時の朝鮮人だった。長崎における原爆犠牲者も7万人のうち1万人が朝鮮人だ。安倍首相はこの事実を知っているし、オバマ大統領も知らないはずがない。広島平和公園の片隅に建つ「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」は27日に行われる米日の合同平和ショーの舞台を見守ることだろう。1970年に広島平和公園の向かい側に建てられたこの慰霊碑が、平和公園の中に移されるまで29年もの時間がかかった。

 慰霊碑はオバマ大統領と安倍首相の姿を見守ると同時に、祖国に対しても恨みに満ちた叱責の言葉を投げかけるだろう。それは「100年前に世界の動きを読み違えて国を失ったのに、今もこのざまか」という言葉だ。

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