サバは悔しい思いをしていることだろう。安くて栄養豊富で庶民にとって欠かせない食卓の味方だったのに、いきなり粒子状物質を発生させる主犯になってしまったからだ。理由もまた、サバにとっては納得しがたいものだ。健康にいいとされる不飽和脂肪酸がサバには多く含まれているが、そのせいで焼くときに粒子状物質が発生するというのだ。

 環境部(省に相当)は5月23日「密閉された広さ85平方メートルの住宅でサバ1尾を焼いたところ、室内の微小粒子状物質(PM2.5)濃度が、「非常に悪い」に相当する基準値(1立方メートル当たり101マイクログラム)の23倍に達した」との研究結果を発表した。この研究結果によると、サバ1尾を焼く際に発生するPM2.5(粒径2.5マイクロメートル以下の微細粒子)の濃度は1立方メートル当たり2290マイクログラムだった。また、サムギョプサル(豚ばら肉)を焼くと、基準の13.5倍に相当する1360マイクログラムのPM2.5が発生し、ほかには目玉焼き(11.2倍)、チャーハン(1.8倍)、トンカツ(1.7倍)で「非常に悪い」の基準を上回るPM2.5が発生した。

 サバを焼くときに粒子状物質が大量に発生する理由は、サバに含まれる不飽和脂肪酸の成分のせいだ。不飽和脂肪酸は、食べ物として体に取り込まれる場合は健康にいいとされるが、空気中では「隠密な殺人者」と呼ばれる粒子状物質に姿を変えてしまうのだ。ソウル大食品栄養学科のクォン・フンジョン教授は「水は加熱すると100度で蒸発するが、油は沸点が高いため完全に気化することができず、分子構造が壊れた状態で空気中でまとまり、浮遊することになる」「サバを焼くときに発生する粒子状物質は、不飽和脂肪酸が過熱された際にできる微細粒子を指している」と説明した。『味とは何か』などの著書で知られるチェ・ナクオン氏(ピョンハン食品情報代表)は「固体の状態を保っている飽和脂肪酸とは異なり、不飽和脂肪酸は液体になっているため、低い温度でも容易に空中で浮遊する。サバの場合、全体の脂肪の70-80%ほどが不飽和脂肪酸で、サムギョプサルは50%ほどだ。そのためサバとサムギョプサルを焼くと粒子状物質が大量に発生する」と説明した。目玉焼きやチャーハン、トンカツなどの調理中に粒子状物質が発生するのは、調理の際に使う食用油が原因だ。クォン・フンジョン教授は「トンカツやチャーハンよりも、目玉焼きの方が食用油の温度が高くなるため、相対的に粒子状物質を多く発生させることになる」と話した。

 調理中に発生する脂肪成分の微細粒子は、大気中の有害な粒子状物質と同じように体に害を及ぼすのだろうか。『考える食卓』の著者、チョン・ジェフン大韓薬師会広報委員は「韓国語で表すと『モンジ(粉じんの意味)』という言葉が入るため勘違いされがちだが、英語では単に「particulate matter(微小粒子状物質)」だ。範囲が非常に広い」と説明した。チョン氏は「サムギョプサルを焼いた後、眼鏡のレンズや食卓には細かい油の粒子が飛び散っているが、それを思い出してもらえれば理解しやすい。調理の過程で揮発した化学物質が大気中の別の物質と結びついて濃縮されると、いわゆる粒子状物質になる。このような物質が呼吸器を通して体内に取り込まれると、健康に害を及ぼす可能性もある」と指摘した。

 延世大環境公害研究所のイム・ヨンウク教授は「粒子状物質を定義する際、先行するのは成分よりも大きさだ。大きな粒子は視界の悪化を招いたり皮膚にくっついたりする程度だが、韓国政府が粒子状物質と定義する粒径10マイクロメートル以下の粒子は、肺に入って心血管疾患などへの影響を及ぼす」として「調理で発生する粒子状物質の被害を最小限に抑えるためには、必ず窓を開けて換気をしなければならない」と指摘した。この実験で健康への有害性についての評価を担当したイム教授は「非喫煙者である主婦たちの肺がん発生率が高いとの研究結果があるため、主婦の調理行為が健康に及ぼす影響を調査し、これに対する予防策を講じるために実験を行った」と説明した。

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