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 ソウルのある高級リゾートで26日に行われたキッズサマーキャンプ。参加した4-5歳の子どもたちはポケットモンスター(ポケモン)の主人公、ピカチュウの帽子をかぶり、ピカチュウの必殺技「ピカピカ100万ボルト!」を叫びながら走り回っていた。このキャンプは1日(5時間半)の参加費が17万ウォン(約1万6000円)超と高額だが、すでに70人の子どもが申し込んだという。リゾート関係者は「毎年運営しているキャンプだが、今年はポケモンコリアと提携してポケモンをテーマにした企画を売り出したところ、申込者が昨年の2倍に増えた」と伝えた。

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 21日、南東部・釜山の海雲台にある高級ホテルのロビー。巨大なピカチュウのぬいぐるみと一緒に写真を撮ろうと、多くの人が列をなしていた。このホテルは22日から1カ月間、15階の海に面した客室3室を「ポケモン・ルーム」とし、ロビーもポケモンのキャラクターで飾っている。3室のテーマカラーはそれぞれイエロー、ブルー、グリーンで、イエローの部屋はポケモンで一番人気のピカチュウ、ブルーの部屋はカメなど水タイプのポケモン、グリーンの部屋はフシギダネなど草タイプのポケモンをテーマにインテリアをコーディネートした。繁忙期の宿泊費は1泊44万ウォン(約4万円)だが、すでに15件の予約が入っているという。

■4.8兆円を稼いだ「妖怪」ポケモン

 日本の民話に出てくる妖怪を子ども向けのキャラクターに発展させた「ポケモンブランド」が、韓国をはじめとする世界各国で再び大きな反響を呼んでいる。ポケモンの始まりは1996年に任天堂が発売したゲームボーイ用ソフトだ。この20年にわたり進化を重ね、テレビアニメ、玩具、キャラクター、文具、教育、サービス業などさまざまな分野に進出した。

 昨年の世界での売上高は21億ドル(約2200億円)。資本金約40億ウォン(約3億7000万円)にすぎない任天堂の関連会社が、キャラクター販売などでその600倍の売上高を毎年計上している計算になる。年間売上高は、韓国のハンファ建設が昨年イラクで勝ち取った新都市建設工事の受注額とほぼ同じだ。ポケモンのプロデュースを手掛ける株式会社ポケモン(東京都港区)によると、ポケモンブランドを立ち上げて以降の累計売上高は4兆8000億円に達し、このうち海外での売り上げが55%を占めるという。最近のスマートフォン(スマホ)ゲーム「ポケモンGO」の大ヒットが重なり、収益はさらに膨らむ見通しだ。

■ポケモン成功の陰に「妖怪学」

 ポケモン・フランチャイズの世界的な成功の裏には、日本で100年前から続いてきた「妖怪学」の土壌があると専門家たちは指摘している。日本では20世紀初めに妖怪学が学問として認められて研究が進み、現在も世界妖怪協会などが活動している。ポケモンのキャラクターは妖怪学を基盤に生まれたということだ。

 実際に、ポケモンのバラエティ豊かなキャラクターは東洋古典『山海経』に登場する化け物や怪獣とよく似ている。例えば、ポケモンのキュウコンは九尾狐、ジュゴンはジョヒ魚、サワムラーは形天に似た風貌をしている。ポケモンはある日会議で偶然生まれたものではなく、昔の伝説と100年以上積み重ねてきた学問的な土台の上に現代的なストーリーを重ねて生まれた成果ということだ。マーケティング専門家のイ・ユジェ・ソウル大教授(経営学科)は「日本は1800年代から人文学に投資し、いわゆる『オタク』と呼ばれる人材を育て上げた。彼らが自国文化に関する豊富なストーリーテリングを生み出している」と説明する。

■「韓国のポロロ、世界的コンテンツへの成長は困難」

 ポケモンの大成功が韓国に教えることは何だろうか。クォン・マンウ慶星大教授(デジタルメディア学部)は、日本は妖怪を徹底して学問化してポケモンを生み出したとし、『となりのトトロ』(1988)や『千と千尋の神隠し』(2001)など世界で認められたコンテンツの場合は、日本の説話や民話など人文学のコンテンツを組み込み、ストーリーも緻密で世界の人々から共感を呼んだと説明した。その上で「韓国も民話や説話など『奇抜な』題材を学問分野として認め、長年支援してこそ、ポケモンのような『キラーコンテンツ』を生み出すことができる」と指摘した。

 日本動画協会によると、日本のアニメ産業規模は2015年に1兆6300億円に達した。クォン教授は「韓国も(ペンギンの)『ポロロ』のように成功したキャラクターがあるが、人文学的な基盤のない純粋な創作物に近いため、ポケモンのようなロングセラーの世界的コンテンツにはなかなか成長できない」と説明した。チェ・ヨンヒ釜慶大教授(国文科)も「冒険的で珍しい研究分野への支援システムを確立し、研究を長期的に支えてこそ、いつの日かポケモンのようなコンテンツを開発できるだろう」と話している。

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