図々しい偽証を繰り返したことで知られる一人が、韓国建設会社元社長のハン・マンホ氏だ。彼は韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相に9億ウォン(現在のレートで約8800万円)相当の違法な政治資金を渡したと検察に供述したが、2010年に行われた韓元首相の一審公判に証人として出廷した時には「(検察で説明したことは)作り話だ」と述べて証言を覆した。さらには、金銭を渡した相手として筋違いな人を挙げた。そのうち一人と法廷で対面した際、相手がどうしようもないというように笑いながら「なぜ私に金銭を渡したと言うのか」と尋ねると、ハン氏は「私が覚えているのに、どうして笑うのか」と答えた。2人は危うく取っ組み合いのケンカになるところだったが、最終的にハン氏がうそをついたと結論付けられた。

 ハン氏の偽証が原因で、韓元首相に懲役2年の判決が確定するまで実に5年がかかった。偽証罪に問われたハン氏は先月、控訴審で懲役2年の実刑判決を言い渡された。偽証では異例の重い刑となった。彼がぬけぬけとうそをついたのは、偽証に対する処罰が寛大なせいだ。2015年に偽証罪で起訴された人は1688人だったが、約8割が執行猶予付き判決を受けた。偽証罪の法定刑は5年以下の懲役または1000万ウォン(約100万円)以下の罰金だが、実際は処罰が甘いため怖がる人はいない。

 国会での偽証も同様だ。国会での偽証罪は法廷偽証罪より重い1年以上10年以下の懲役刑に処されることになっているが、実際に処罰されるケースは少ない。処罰には国会の告発が必要となるため、与野党の意見がすれ違えば告発そのものができないこともある。第19代国会(2012年5月-16年5月)で、偽証容疑の告発が8件に過ぎなかったのもそのせいだ。それさえも、ほとんどが「嫌疑なし」と判断された。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件をめぐる国会聴聞会での偽証に対しては、少し様相が異なるようだ。国政介入事件と朴大統領が絡む疑惑を調べる特別検察官の捜査チームが、捜査の「武器」として使うため、国会に偽証の告発を積極的に要請しているのだ。文亨杓(ムン・ヒョンピョ)前保健福祉部(省に相当、以下同じ)長官は聴聞会で、同部所管でサムスン物産の大株主だった国民年金公団にサムスン物産と第一毛織の合併に賛成するよう指示したことはないと証言したが、特別検察の捜査で指示を認めた。特別検察は職権乱用と偽証の疑いで文氏を逮捕した。立証の難しい職権乱用容疑に、誰が見ても明らかな偽証を組み合わせて逮捕したのだ。

 この先も、特別検察は同じ手を使うようだ。要請を受けてすでに5人が偽証で告発された。その中には、朴政権に批判的な文化芸術界関係者をリストアップした「文化界ブラックリスト」について、聴聞会で「見たこともない」と証言した趙允旋(チョ・ユンソン)文化体育観光部長官も含まれている。本当に偽証なのかどうか、今はまだ分からない。だが、今回の聴聞会が「うその証言」に警鐘を鳴らすことになるのは間違いなさそうだ。米国では偽証は重罪と見なされている。国会で偽証すればほとんどの場合、逮捕される。うそには代償が伴うべきだ。

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