先月20日、ベトナム・ハノイを出発して韓国・仁川に向かっていた大韓航空機内で暴れたとして逮捕されたイム・ボムジュン容疑者(35)は、自分を止めようとした乗務員を蹴飛ばしたり、唾を吐きかけたりした。その9日後、仁川国際空港ではシンガポール行きの大韓航空機内で泥酔状態の30代ロシア人が女性乗務員をののしるなどの騒ぎを起こし、搭乗を拒否された。旅客機の客室乗務員は今なお多くの女性にとって人気の職業だが、海外旅行が急増するにつれて苦痛を強いられる乗務員も増えている。

 昨年7月、タイ・バンコクから韓国に帰国中だった40代の男は女性乗務員に対する強制わいせつ罪に問われ、懲役8カ月の判決を受けた。この男は明け方に出発便が離陸し、シートベルト着用サインが消えると女性乗務員を呼び、座席上部の物入れに入っているかばんを何度も上げ下ろしさせた。機内が消灯しているなか、男は自分の頼んだ仕事に熱中する20代乗務員の尻を触ったとされる。

 2015年には、50代の日本人の男が成田からオーストラリアのゴールド・コーストに向かう旅客機内で、ノートパソコンでアダルトコンテンツを見ながら自慰行為をしていて摘発された。韓国の歌手ボビー・キムも、米サンフランシスコに向かう機内で酒に酔って女性乗務員の腰を抱き寄せ「どこのホテルに泊まるの」と尋ねるなど強制わいせつで物議を醸した。 

 韓国国籍の旅客機で発生する乗務員へのセクハラ事件は、13年時点では年3-4件にとどまっていたが、15年以降は10件以上に急増した。航空会社や乗務員が我慢して問題にしないケースが多いため、実際のセクハラ件数はこれをはるかに上回ると推定される。アシアナ航空のある乗務員は「客室乗務員を数年やっているが、乗務員なら誰でも一度はセクハラやそれに似た不快な経験をしたことがあるのでは。でも度を越えたものでなければ、そのままやり過ごすことが多い」と明かした。ある米国人は15年、ニューヨークから仁川に向かっていた機内で、泥酔状態で女性乗務員3人の体を触るなどした。やめさせようとした男性乗務員にも暴力を振るったとされる。

 乗客に暴力を振るわれる乗務員も少なくない。海外の航空会社で働く韓国人乗務員(28)は「ビールを切らして提供できなかった乗客から、機内後方のトイレ前でほおを強くつねられ、痛くて恥ずかしくて一人で涙を流した」と打ち明けた。海外航空会社の韓国人乗務員は雇用が不安定なため、乗客とのトラブルを避けようとする傾向があるという。韓国航空会社の乗務員の中にも、ビジネスクラスのトイレを使おうとした乗客を止めた際に髪をつかまれた人もおり、表ざたになっていない暴行事件が少なくないとされる。

 熱湯の入ったカップラーメンをかぶった乗務員もいた。バンコクから中国・南京に向かう旅客機内で、自分の席を恋人の隣に変えてほしいと求めた20代の中国人の男が、なかなか変えてもらえなかったことに腹を立てて騒ぎを起こし、怒った恋人もカップラーメンを乗務員の顔にぶちまけたとされる。旅客機はバンコクに引き返し、このカップルは空港で待機していた警察に逮捕された。

 韓国の航空会社7社が把握した機内での違法行為は、12年が191件、13年が203件、14年が354件、15年が460件と、近年急増している。15年に摘発された違法行為は、機内での喫煙が381件で最も多く、次いで暴言を吐くなどの騒乱行為(42件)、セクハラ行為(15件)、飲酒後に危害を加える行為(9件)、暴行・脅迫(6件)と続いた。

 機内での違法行為はほとんどの場合、罰金刑に処されており、処罰を強化すべきとの声も強まっている。国会では先ごろ、与党セヌリ党の議員や最大野党「共に民主党」の議員らが機内での違法行為に対する処罰を強化する法案を相次ぎ提出した。これらの法案は、単純な騒乱行為に対しても懲役刑の実刑判決を可能にすることを柱としている。

 一方、イム・ボムジュン容疑者が騒ぎを起こした機内に乗り合わせた米国の有名歌手リチャード・マークスさんから乗務員の未熟な対応を指摘された大韓航空は、機内で暴力を振るったり暴れたりした前歴のある乗客を「ブラックリスト」に載せ、搭乗を拒否することを決定。騒ぎを起こしたイム容疑者とロシア人乗客をすでにリストに加えた。

ホーム TOP