「ヘリ空母」といわれる日本の護衛艦「いずも」が、今年5月から8月にかけて、南シナ海の領有権をめぐって中国と対立している国々を回りつつ米国・日本・インドの年次合同演習に参加することを計画しているという。ロイター通信が14日に報じた。米国CNNテレビも「国防総省の消息筋が、こうした計画を確認した」と伝えた。「いずも」は、第2次大戦後に日本が保有した中では最大規模の戦闘艦で、有事の際には空母として活用できる。

 「いずも」の南シナ海投入は、日本にとって戦後最大規模の海軍力誇示になる見込みだ。中国は昨年12月から今年1月にかけて空母「遼寧」機動部隊を南シナ海へ送り、軍事演習を実施した。米国も今年2月から1カ月近くにわたり、空母「カール・ビンソン」を問題の海域に投入した。

 報道によると、海上自衛隊の「いずも」は5月からシンガポール・インドネシア・フィリピン・スリランカを順次訪問した後、7月にはインド洋で行われる米印海軍との年次合同演習「マラバール」に参加する。この過程で、東南アジア諸国が中国と領有権をめぐって対立している南シナ海を通過する-とCNNは伝えた。またロイター通信は「自衛隊は、今回の長期航海を通して、『いずも』の能力をテストしつつ南シナ海で米海軍と共に訓練を行う予定」と報じた。

 自衛隊の艦艇が南シナ海で訓練を行うこと自体は、初めてではない。しかし「いずも」は事実上空母に相当するという点から、これまでの自衛隊の艦艇とは存在感が異なる。全長248メートル、全幅38メートルの「いずも」は、米国の原子力空母や中国初の空母「遼寧」よりは小さい。しかし、英国・イタリア・スペインなど欧州諸国が有する空母よりは大きい。

 しかも「いずも」の上甲板を少し改造すれば、米海兵隊が保有する短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型のF35B戦闘機を搭載できる。第2次大戦後、日本は空母の保有が禁じられていたが、「いずも」によって事実上空母クラスの海軍力を有していると評されている。ホワイトハウスのスティーブン・バノン首席戦略官が作った極右メディア「ブライトバート」は「名前だけは駆逐艦の『いずも』による3カ月の航海を、中国は挑発的な武力の誇示と感じるだろう。『いずも』は、敵国が占領した島しょを奪還する水陸両用作戦に特化している」と分析した。またCNNは「日本の平和憲法は自衛隊に交戦権を認めていないが、『いずも』は日本の軍事力を海外に投射し得る例外的な手段」と報じた。

 トランプ政権発足後、南シナ海をめぐる米中の対立は激化が続いている。レックス・ティラーソン国務長官は、就任前に「中国が南シナ海で行っている人工島アプローチを防ぐ」と語っていた。中国は南シナ海で、軍事基地などを有する七つの人工島を完成させている。ジェームズ・マティス国防長官も「(中国が領有権を主張している)南シナ海でも、必ず米国の利益を守らなければならない」として、海軍力の増強を予告した。これに対抗して中国は昨年末、史上初めて自国の空母機動部隊を南シナ海へ投入し、不退転の決意を見せた。

 日本はこれまで、東シナ海の尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権をめぐって中国と対立してきたが、南シナ海問題には直接タッチしなかった。その日本が南シナ海に「いずも」を送ると決めたことにより、米国と共に中国をけん制するため共同戦線を張る、という分析が登場している。米国は、南シナ海を含む西太平洋へ進出しようとする中国の試みを阻止する上で日本の役割が重要と判断し、日本もこうした機会を活用して軍事力の拡大を図っているという。

 また、中国と対立している東南アジア諸国をまとめようという狙いもあるものとみられる。ロイター通信は「日本は、『いずも』がフィリピンを訪問した際、ドゥテルテ大統領が『いずも』を訪問することを希望している」と伝えた。

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