米財務省が6月29日(現地時間)、中国の丹東銀行を「マネーロンダリングの懸念がある機関」に指定し、米国と同行との取引を禁じた。これは、昨年5月に北朝鮮を「主なマネーロンダリングの懸念対象国」に公式指定したのに続く措置だ。当時、米財務省は米国・北朝鮮間の金融取引を禁止すると共に、第三国の金融機関が北朝鮮の実名もしくは借名口座を維持する場合、当該金融機関との取引も禁止するという方針を立てた。スティーブン・ムニューシン財務長官は、丹東銀行について「北朝鮮が米国および国際金融システムにアプローチするアクセスドアの役割を果たした」と主張した。

 今回の制裁は、2005年に米国がマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)を制裁してから12年を経て行われた。2005年のケースは、最も成功した米国の北朝鮮制裁に挙げられている。当時、北朝鮮は米国の制裁で金正日(キム・ジョンイル)総書記(当時)の統治資金稼ぎに支障が生じ、やむをえず交渉の場に出てきた。丹東銀行は中小銀行ではあるが、丹東で朝中間の貿易の70%が行われているという点を考慮すると、北朝鮮制裁においてかなりの効果を挙げることができるとみられる。

 今回の制裁は、妙なタイミングで行われた。米財務省は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のドナルド・トランプ大統領の初顔合わせとなる公式夕食会の4時間前にこの制裁を電撃発表した。発表の場所も、夕食会が開かれるホワイトハウスだった。文大統領をワシントンに呼んでおいて、中国を圧迫する制裁を発表し、まるでトランプ大統領が文大統領に対し、北朝鮮問題関連で米国と中国のどちらを選ぶべきかはっきり見せてやろうとするかのような場面を演出したのだ。

 この措置をめぐって、外交消息筋は「今回の制裁は米国と事前協議がなされたもの。発表の時期についても、米国が前もって韓国側に了解を求めた」と語った。しかしこの言葉の通りだとしても、米国が発表の時期を決めて通知してきたのは間違いない。また、別の外交消息筋は「トランプ大統領は、来月初めに開かれるG20(主要20カ国・地域)サミットで中国の習近平国家主席と会う前に、北朝鮮制裁を発表することを望んだ」と語った。習主席と会う前に、北朝鮮問題に関して中国を圧迫するカードを切り、交渉の「てこ」として使おうと考えたという。ホワイトハウスのハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も同日「北朝鮮に対する中国の経済的圧力は十分ではない」と語った、

 米国は、トランプ大統領が6月20日にツイッターで「中国による北朝鮮圧迫の努力はありがたく思うが、その努力はきちんと通用しなかった」とコメントして以来、「中国たたき」を続けている。6月21日に開かれた米中の高官級外交・安全保障対話では「北朝鮮に対する圧迫をもっと強化せよ」と要求した。6月27日には、国務省が「2017人身売買報告書」を発表し、中国を「最悪の人身売買国」に格下げした。

 対中外交の基本原則たる「一つの中国」を揺るがす台湾カードも、相次いで切っている。米国連邦議会の上院軍事委員会は6月28日、1979年の米中国交正常化以来初めて、米海軍が台湾の港に停泊できるようにする国防授権法案(NDAA)を通過させた。また29日には米国務省が、レーダーの部品や魚雷など13億ドル(約1460億円)相当の武器を台湾向けに売ることを承認した。

 今回、丹東銀行など中国の2つの企業と2人の中国人を制裁した措置は、本格的な「セカンダリ・ボイコット」(北朝鮮と取引する第三国の個人・企業に対する制裁)のシグナルといえる、と分析されている。米国務省は、北朝鮮と取引する中国企業や個人など10の対象について今年の夏までに措置を取るよう、中国政府に要請したといわれている。共和党所属のボブ・コーカー上院議員(上院外交委員長)は6月28日、「中国が北朝鮮に対する圧迫を強化しないのなら、米国は強硬なやり方でいくべきで、これはセカンダリ・ボイコットを意味する」と語った。

 米CNNテレビは29日「トランプ大統領と中国の習近平国家主席のハネムーンは終わった。トランプ政権は、中国に対し敵対的に機能しかねない政策を発表し、両大国の関係を冷え込ませた」と報じた。

 中国は強く反発した。中国外務省の陸慷報道官は、6月30日の定例ブリーフィングで「中国は、いかなる国であっても、国連安全保障理事会の体制外で自国の国内法に基づき、中国の企業や個人を統制することに反対する。米国側が直ちに誤りを是正し、両国の協力に影響を及ぼさないようにすることを求める」とコメントした。

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