▲慶尚北道取材本部=クォン・グァンスン記者

 慶尚北道星州郡にある町内会館前では、国防部(省に相当)が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)発射台2基などを搬入した4月末からTHAAD配備に反対する団体メンバー・住民のデモが続いている。デモ隊は町内会館前の往復2車線道路の半分まで不法占拠して「臨時検問所」を設置、一般車両はもちろん警察車両まで検問する。さらに、6月末からはTHAAD配備に賛成する保守系団体もこれに対抗してデモを行っている。

 警察はこの一帯に3個中隊(240人)を常時配置している。住民らは先日、「警察バスのエンジンをかけてエアコンをつけるな」と抗議したという。うるさいし、排ガスが臭いという理由からだ。警察は先週末から星州ゴルフ場のキャディー宿泊施設だった町内会館前にある4階建ての建物の一部(現在は国防部所有)を借りて休憩時に使っている。

 警察はこの3カ月間あまり、「星州が無法地帯になっているのにもかかわらず、公権力を行使できていない」と世間から非難を浴びている。しかし、現場で見ていると、警察が無気力に見えるのにはそれなりの事情がある。先月13日に保守系団体がTHAAD配備に賛成する合法的なデモ行進をしようと試みたが、THAAD配備に反対する団体メンバー・住民に阻止された。この時、90代の女性2人と80代の女性7-8人が道路に座り込み、保守系団体のデモ行進を阻んだ。女性警官数人が抵抗する高齢の女性たちに腕をかまれてあざを作るなどして負傷した。警察は証拠収集作業などを実施したが処罰は保留した。

 警察はこれまで3回、住民らが設置・運営している違法検問所を強制的に撤去しようとしたが、そのたびに高齢の女性たちがデモ現場に出てきた。警察は「高齢女性デモ隊」の背後にTHAAD反対勢力の存在があると考えている。警察が強制力を行使できないよう、意図的に高齢の女性を前面に立たせているのだ。警察関係者は「いくら違法だとしても、高齢の女性たちを強制的に連行するのは容易ではない。デモの形態はますます緻密(ちみつ)で知能的になっているように感じる」と語った。

 警察と軍の立場にも温度差があるようだ。警察はこれまで、道路交通法違反・集会およびデモに関する法律違反・交通妨害罪などを適用して約50人を逮捕・召喚している。法を守るための基本的業務はしていると自負している。だがその一方で軍は、THAADを配備する過程で、これに反対する住民らの気に障らないようにしている様子がうかがえる。軍は先月12日午前、THAAD基地内で故障したトラックを移動させるため、レッカー車の搬入に関して警察に支援を要請した。ところが、軍は同じ件で住民にも事前に通知し、住民が先に道を占拠すると、作戦を取り消した。軍を支援しようと約1500人を急きょ派遣した警察も仕方なく撤退した。この件でも「無気力な公権力」という声がまた聞かれた。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が先日、THAADの追加配備を指示したが、軍を含めた政府レベルでの「後続措置」はまったく伝えられていない。警察を何もできなくしているのはTHAADに反対する数十人の団体メンバーや住民だけではない、と考えずにはいられない。

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