今日(8月9日)は韓国マラソン界にとって特別の日だ。1936年8月9日、故・孫基禎(ソン・ギジョン)=1912-2002=選手が日本統治時代のベルリン・オリンピックにおいて当時のオリンピック記録(2時間29分19秒)で優勝し、世界を驚かせた。また3年後の2020年の今日は東京オリンピックの最終日で、マラソンが行われる日だ。ところが東京オリンピックのマラソンで韓国がメダルを獲得する可能性は非常に低い。今月6日にロンドンで行われた世界陸上のマラソンに韓国からキム・ヒョス選手ら3人が出場したが、いずれも2時間25-29分台で60位前後にとどまり、期待が大きく裏切られたからだ。

 昨年のリオデジャネイロ・オリンピックのマラソンでも韓国は過去最悪の結果に終わった。ある韓国選手は2時間42分42秒、完走した選手の中では後ろから3番目の138位に終わったが、このタイムは80年前の孫選手の記録にもはるかに及ばないものだ。当時の孫選手の足跡を見てみよう。東京を出発し、ソウル-満州-シベリア-モスクワを経て列車で2週間かけてベルリンまで移動したが、その間はまともに食事もできず寝ることもできなかった。しかし孫選手は徹底した準備で当時誰も破れなかった2時間30分の壁を破った。ポケットに砂袋を入れて独立軍のように練習し、シューズの底をナイフで削り軽くして本番に臨んだ。またシャツや下着もできるだけ切り取り、ウエアの重さも最大限軽くした。このような練習法や試合に臨む姿勢、闘志を少しでも見習っていれば、リオで最低でも2時間40分くらいは破れたはずだ。

 また大韓陸上連盟も東京オリンピックに向け特別な対策は立てておらず、通常レベルの競技力向上委員会しかない。残された期間だけで大記録を打ち立てることは簡単ではないだろうが、代表選手たちにせめて孫選手の精神だけでも伝えれば、少なくとも恥ずかしい試合にはならないはずだ。選手たちは今からでもソウル市内の孫基禎・体育公園を訪れ、81年前のつらい記憶を伝える写真や動画、金メダルを見てほしい。そうすれば少しでも記録の向上につながるだろう。昨年の屈辱的なマラソン記録を東京で開催されるオリンピックで繰り返してはならない。今も国民の脳裏には抗日・克日の精神が刻まれているはずだ。

キム・スインさん(スポーツコラムニスト)

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