米国際貿易委員会(ITC)は21日、米国に輸入される韓国製の洗濯機で米国の洗濯機産業が被害を受けているとして、輸入洗濯機に最高50%の関税を課すセーフガード(緊急輸入制限)を勧告することを決めた。米国に輸入される洗濯機の約90%が韓国製なので、今回の勧告は事実上、サムスン電子、LG電子の製品を狙ったものだ。

 これを受け、米国に年間300万台の洗濯機を輸出するサムスン電子、LG電子は対応に追われている。専門家はトランプ米大統領が「自国優先主義」を強化するシグナルとして受け止めている。       

■同時多発的な圧力

 ITCは3年にわたり、外国製洗濯機に関税を課す案を示した。120万台を超える輸入分の洗濯機に初年度は50%の関税を課し、2年目は45%、3年目は40%を課税する内容だ。120万台未満の部分については、関税を課すべきではないとの意見(4人)と1年目20%、2年目18%、3年目15%を課税するとの意見(2人)に分かれた。ITCはそれぞれの意見を併記した勧告案を示した。ITCはまた、洗濯機部品についても、3年間の1年目には5万台分の超過部分に50%、2年目には7万台分の超過部分に45%、3年目には9万台分の超過部分に40%を課税することを勧告した。ITCは近く、トランプ米大統領に勧告案を提出する予定で、来年2月までにセーフガードを発動するかどうかが決まる。米国は2002年以降、セーフガードを発動したことはない。

 今回のセーフガード調査は、米家電大手ワールプールの要請によるものだ。サムスン、LGの躍進で米国市場での地位が揺らいだワールプールが米政府をバックにけん制に乗り出したものだ。サムスン、LGは米国への輸出用洗濯機の大半をベトナムやタイなど海外工場で生産している。セーフガードは原産地に関係なく、対象企業の製品の輸入を制限するため、反ダンピング関税よりも影響が大きい。しかし、韓米自由貿易協定(FTA)があるため、韓国で生産した洗濯機は関税の課税対象から外れた。

 当初ワールプールは全ての洗濯機に一律50%の関税を課すべきだと主張した。しかし、ITCは120万台を超える部分について、高率の関税を課すことを勧告した。サムスン、LGにとっては最悪の事態は回避した格好だ。

 ただ、現在1%台の関税率が一気に上昇するため、サムスンとLGの負担は大きい。韓国の産業通商資源部(省に相当)によると、両社が米国に輸出する洗濯機は年300万台前後で、金額にすると10億ドルに達する。高率関税の課税基準とされた120万台は両社による輸出分の半分にも満たない。トランプ大統領が120万台未満の輸入分にも関税を課すことを決めれば衝撃は広がる。

 サムスン、LGは対策に乗り出した。サムスン電子は米サウスカロライナ州に建設中の家電工場の完成時期を来年1-3月期に前倒しする。LG電子も当初2019年1-3月期に予定していたテネシー州の洗濯機工場の完成時期を来年後半に繰り上げる。産業通商資源部は同日、サムスン、LGとの緊急会合を開き、米国がセーフガードを発動した場合、世界貿易機関(WTO)に提訴することを検討すると表明した。

 トランプ大統領は韓国を対象に全方位的な通商圧力をかけている。ITCは先月31日、韓国から輸入される太陽電池モジュールが自国産業に深刻な被害を与えているとして、4年間で最高35%の関税を課すセーフガード勧告案を発表した。また、サムスン電子が米国企業の半導体関連特許を侵害しているかどうかに関する調査にも着手した。昨年9月には韓国が米国に輸出するPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂に対する反ダンピング調査を開始した。

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