米ニューヨーク・マンハッタンの中心部「タイムズ・スクエア」に行くと、たくさんの人々が道や階段に座っている。現地の公共交通機関が高くて混雑しているので、長い時間歩く人が多いのだが、歩いているうちに疲れて立っていられなくなる。それでも華やかな電光掲示板の広告や電光看板から目を離せないのだろう。ここでは電光看板そのものがニューヨークを代表する観光商品だと言ってもいい。ここに広告を出す企業や広告のサイズ、時間を見れば世界の経済の流れが見えるという話もある。2017年にサムスン電子がスマートフォン「Galaxy(ギャラクシー)S8」を発売した時は、電光看板42本を一度に購入した。

 最近は韓国企業だけでなく、韓流アイドルの広告が出されるケースも大幅に増えたという。EXOや防弾少年団はもちろん、先月は人気急上昇中のカン・ダニエルの広告が出た。彼のファンがお金を集めて太っ腹な誕生日プレゼントをしてくれたのだ。サムスン電子・現代自動車のようなグローバル企業に続き、今や韓国のサブカルチャーがニューヨークの中心部にまで進出したとは感慨深い。

 ところが、先週ここに文在寅(ムン・ジェイン)大統領の広告映像が出た。「ハッピー・イニ・デー、文在寅大統領の66回目の誕生日をお祝いします」「韓国に生まれてくださってありがとうございます」(イニとは文大統領の愛称。66回目の誕生日とは生まれた当日も数えたもの)。文大統領の誕生日を迎えるにあたり、ある支持者が2分30秒間のお祝い映像を作ったという。大統領のことが大好きな支持者たちが純粋な気持ちから誕生日を祝う広告を出したというなら、とがめるようなことでもなのかもしれない。

 だが問題は、その場所が一日300万人もの観光客が行き来するニューヨークのど真ん中だということだ。ここで政治家、それも誕生日を祝う広告が出るのは非常に異例なことだ。熱狂的な支持者がいることでは文大統領に劣らないオバマ大統領でも、財閥大統領・トランプ大統領の誕生日でもここまではしない。

 外国人たちは果たして文大統領の誕生日を祝う広告を見て何を考えただろうか。もし、「コリア(Korea)」という単語を見ていなければ、文大統領をどこの国の大統領だろうかぐらいにしか思わなかっただろうか? どこの後進国の独裁者だろうかと誤解したのではないだろうか? このような心配をせずにはいられない。

 「ニューヨークの電光広告を作る際に公務員が先頭に立ったわけでもないし、国の資金が投入されたわけでもないから、そこまで心配することはない」と言う人もいるだろう。しかし、このような事情をよく知らずに広告だけを見る外国人の目に、韓国という国や文在寅大統領はどのように映っただろうか?

 文大統領の誕生日プレゼントをめぐって巻き起こっている騒動はこれだけではない。支持者たちが「平和オリンピック」をポータルサイトの人気検索ワードに浮上させてプレゼントしようと提案し、「平壌オリンピック」という検索ワードと競い合ったことも、大統領に対する過剰な愛情がもたらした突発事故としか言いようがない。ただでさえ南北合同チーム問題で二分されてしまっている民心に、「平和」と「平壌」という渡れない川が新たに横たわったからだ。大統領を尊敬し、愛する気持ちから特別なプレゼントをしたかったのだろうが、想定外の結果を招けば、プレゼントを受け取る大統領にとっても負担になるだろう。

 このため、与党内部でさえ文大統領に対する熱狂的な支持の副作用を懸念する人が少なくない。「大統領の最側近」といわれる楊正哲(ヤン・ジョンチョル)元大統領府広報企画秘書官までもが「ありがたいのはありがたいが、負担になったのも事実だ」と言ったのだから、よほどのことだろう。

 これら支持者の愛情が「自然人・文在寅」に対するものであるならともかく、「大統領・文在寅」に対するものなら話は違ってくる。大統領本人だけでなく、支持者の言動も大統領のレベルを物語るものであり、それはそのまま国の品格につながるからだ。

シン・ドンウクTV朝鮮『ニュース9』アンカー

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