▲4日放送された総合編成チャンネル「TV朝鮮」の時事番組『CSI:消費者探査隊』で、ソウル市内の5つ星ホテルの清掃スタッフが便器の水に浸したスポンジでトイレの内側を磨いている(写真左)。このスタッフはすぐに同じスポンジで宿泊客用のコップを洗った(同右)。写真=TV朝鮮より

 4日、総合編成チャンネル「TV朝鮮」の時事番組『CSI:消費者探査隊』がソウル市内の5つ星ホテル3カ所の客室清掃の実態を報道した。一日の宿泊費が1人当たり最低20万-30万ウォン(約2万-3万円)という「一流ホテル」だ。番組スタッフが二日間、客室に泊まってカメラに収めた姿は、一流ホテルの名が廃るものだった。清掃スタッフはスポンジを便器の水で湿らせてトイレを掃除した後、そのスポンジを水ですすがずに客室内に置かれているコップを洗うのに使った。消費者らは「ホテルは高価な装飾品や美術品でうわべをきれいに飾っているが、衛生問題は目に付きにくいため神経をとがらせていない」と指摘する。

■便器磨いたスポンジでコップ洗う

 最初の映像に登場したAホテル。客室スタッフは便器にたまっている水にスポンジを浸してからトイレの内側や外側を磨いた。そして、そのスポンジに洗剤を少しだけ付けて、コップを磨いた。このコップは宿泊客が水や飲み物を飲めるように室内に備えられているものだ。スタッフは同じスポンジで浴槽も磨いた。コップの水気は宿泊客が使用後、床に落ちていたタオルでふいた。便器・コップ・浴槽を磨く際、スポンジは一度も水ですすいでいない。客室清掃が終わった後、番組スタッフが汚染度測定器で客室にあるソファの汚染度を測定すると、安全基準値の15倍を上回る数字が出た。

 BホテルやCホテルも状況はほぼ同じだった。Bホテルのスタッフはカートから既に使用されたようなタオルを取り出してバスルームの洗面台や浴槽を磨いた。同じタオルで便器の内側やトイレの床までふいて清掃を終えた。Cホテルでは宿泊客が使用した枕カバーを数回パンパンとたたいただけで、取り換えずにそのまま置いた。Aホテルと同様にトイレを磨いたスポンジで洗面台やコップをすべて磨いた。

■一流ホテルでも崩壊していた職業倫理

 各ホテルにはどこも清掃マニュアルがある。多少の違いはあるが、ベッドメーキングやトイレ掃除、コップを洗う時に使用する手袋の色を区別して支給している。ぞうきんやスポンジも用途に応じて使い分ける。これが清掃現場では守られていない。通常、スタッフ1人が一日に清掃する客室数は15室前後だ。勤務時間は昼休みを除いて9時間。マニュアル通り清掃すれば1室約1時間かかるという。一流ホテルの清掃スタッフはほとんどが下請け業者を通じて雇用されている。基本給170万-180万ウォン(約17万-18万円)で、担当する客室が多ければ多いほど給料も上がるシステムだ。より多く稼ごうと、割り当てよりも4-5室多く清掃することが多い。これを「オーバールーム」と言う。ホテルのスタッフだった人物は「良心に従って働いている人の方が珍しい」と言った。他人が見ていない所では基本的な職業倫理が守られていないのだ。清掃スタッフたちは「時間に追われているため、手袋やぞうきんを交換する時間がない」と話す。ソウルの5つ星ホテルで働いていた女性は「最初は教えられた通り徹底して衛生観念を守るが、時間がたつと早く清掃することの方が重要になってくる」と言った。

■衛生チェックもずさん

 今回の報道を知った人々は憤慨している。問題のホテルを5日に訪れたイさん(65)=女性=は「一流ホテルの衛生状態がこのありさまだとは、どこにも行けなくなる」と語った。別のホテルに泊まったという50代の女性は「外国から知人が来る時に勧めていたホテルなのに、失望した」と言った。

 ソウル市は「衛生上の問題を摘発するのは難しい」としている。ソウル市生活衛生課のキム・ソンチャン課長は「公衆衛生管理法に基づいて市庁から各区庁に指示し、宿泊施設の衛生状態をチェックしているが、消毒や寝具類の洗濯など一部にしか明確な規定がない。隠しカメラを設置するのでない限り、清掃の過程で生じる問題を摘発するのは難しい」と述べた。

 問題になったホテル側は「近年ソウル市内の一流ホテルの数が増え、経験が少ないスタッフが数多く採用されている。スタッフが清掃規定を正しく理解していないことが主な原因だ」と説明した。また、別のホテル関係者は「下請け業者に所属しているため、ホテルが直接、勤務を監督すると現行法に違反することになり、難しい。今後はチェック回数を増やすなどの対策を立てる」と言った。漢陽大学観光学部のキム・ナンジョ教授は「ホテル価格やブランドはサービスの質につながっていなければならない。外見を飾ることだけに重点を置いていては、一流ホテルとしての役割を果たせない」と批判した。

ホーム TOP