李明博(イ・ミョンバク)元大統領が昨日被疑者として検察に出頭した。全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領、盧泰愚(ノ・テウ)元大統領、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領、朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領に続き、在任中の不正行為によって検察に出頭した5人目の大統領経験者となった。李元大統領は1月17日に発表した声明では「(検察による捜査は)盧武鉉元大統領の死に対する政治報復だ」と主張していたが、今回検察庁に入る際には「歴史において今回のようなことはこれで最後になってほしい」と短くコメントした。実際に李元大統領に対する捜査は容疑が明るみに出てから行われたというよりも、最初から李元大統領を標的にして後から容疑を探し出したようなものだった。

 李元大統領に対する捜査は非常に広範囲でなおかつ執拗(しつよう)だった。検察は国家情報院と韓国軍によるネットでの書き込み事件からスタートし、自動車部品会社のDAS、国家情報院の特殊活動費、サムスンによる訴訟費用の肩代わりなどへと徐々に捜査を拡大し、さらに国税庁や国家情報院などの国家機関も半年以上にわたり李元大統領の周辺に探りを入れた。その結果、李元大統領の兄や娘婿、過去の側近など周辺の人物がほぼ全て一網打尽とも言える形で検察での事情聴取を受けた。これに朴槿恵前大統領への捜査まで含めると、前政権とその前の政権に対する捜査に検察から90人以上が投入され、その結果34人が身柄を拘束された。両政権で名前の知られた人物はほぼ全て捜査線上に上ったはずだ。

 一方で検察が目を付けた容疑の中には単に「政治報復」として片付けられないものも少なくなかった。とりわけ李元大統領が過去に投資を行い、発生した損失を取り戻すための訴訟に政府職員を動員し、また60億ウォン(現在のレートで約6億円、以下同じ)に上る弁護士費用をサムスングループに肩代わりさせた疑いが事実であれば、これは到底容認できるものではない。さらに人事での口利きなどの見返りに数十億ウォン(数億円)の違法な資金を受け取った容疑も浮上している。これらの容疑の中には盧武鉉元大統領への捜査が行われた期間、あるいは盧武鉉元大統領の自殺後に行われたものもあるという。前の政権における失態を目の当たりにしながらこれを教訓とせず、同じ罪を犯していたのだ。検察は今後粛々と証拠を探して捜査を続け、李元大統領も事実関係を隠すことなく明らかにしていくべきだろう。

 今回の事件により大韓民国の歴代大統領による不祥事の中で、唯一例外だった李元大統領も悲劇に巻き込まれることになった。李承晩(イ・スンマン)大統領から朴正煕(パク・チョンヒ)、全斗煥、盧泰愚、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉、李明博、朴槿恵大統領に至るまで、韓国政府樹立後に大統領として実質的に政権を運営し権力を振るった人物は全て下野、弾劾、殺害、自殺、収監、さらには晩年に側近らの不正で満身創痍(そうい)とも言える立場に追い込まれた。世界を見回してもこのような国はおそらく見当たらないだろう。つまりこの問題は大統領経験者個人の問題として片付けられるものではなく、制度そのものに間違いなく欠陥があると言わざるを得ない。それがどういうものか、今や韓国国民の多くが理解しているはずだ。

 韓国の大統領は政策面では国会から強いけん制を受けるが、人事や検察権といった権力行使に関しては文字通り王のように振る舞うことができる。1%でも得票数が少なければ全てを失う野党は常に反対のための反対に没頭しており、政権を握ればその恨みを晴らすため恥も外聞もなく報復に乗り出す。この悪循環がネズミ車のように回転を続けるのが韓国におけるいわゆる「大統領無責任制」だ。一時は帝王的大統領制が国の発展に不可欠と考えられた時代もあったが、今ではそのマイナス面ばかりが目につくようになった。大統領経験者に対する仕打ちに終止符を打つには、大統領の権力を分散し、その権力を実質的にけん制することによって、韓国における政治を「生きるか死ぬか」の闘争ではなく協治の形で進められるようにする以外に、もはや方法はない。

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