萬物相
【萬物相】韓国代表選手の兵役免除
2012年のロンドン・オリンピックのサッカー競技で、韓国と日本は3位決定戦で対戦した。厳しい戦いになると予想されたが、ふたを開けてみると韓国が2-0で完勝した。これに対して日本側から「兵役免除のために試合に出る韓国選手とはまともに戦えない」などの声が上がった。米国のテレビ番組も機会があるたびに韓国の兵役を話題にする。試合中にもみ合いでも起ころうものなら「韓国は非常に執念深い」と指摘し、試合後には「兵役が免除されておめでとう」などと皮肉ることも多い。米国現地在住の韓国人の中には非常に恥ずかしい思いをする人がたくさんいるという。
今回のアジア大会もこれまでと同じような状況となった。英国のBBC放送は韓国チームについてかなり詳しく報じたが、その中で「トットナムの孫興民(ソン・フンミン)=26=は兵役免除を受けるためアジア大会に出場した」「孫選手は決勝戦での勝利で兵役問題から解放された」などと報じた。フランスで活躍し、さまざまな事情を経てオリンピックで兵役免除を受けた朴主永(パク・チュヨン)選手の名前もこの記事に登場した。英国のSNS(会員制交流サイト)では所属チームの監督やファンから孫興民に祝いの言葉が相次いだ。つまり試合内容ではなく、孫興民が兵役免除を受けられるかどうかに関心が集まっていたのだ。どうもスッキリしない気分だ。
韓国におけるスポーツ選手に対する兵役の特例は45年前に始まった。1976年のモントリオール・オリンピックでレスリングに出場し金メダルを獲得した梁正模(ヤン・ジョンモ)氏が初めてその対象となり、これまで900人以上の選手が恩恵を受けた。1990年以降はオリンピックでの銅メダル以上、アジア大会の金メダルが兵役免除の基準となった。2002年のサッカー・ワールドカップ韓日大会と06年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では準決勝進出もその対象になった。文化芸術界でも国内外の有名コンクール優勝者、無形文化財の伝習者などは「芸術要員」と呼ばれ、その対象となった。国際囲碁大会で次々と優勝した李昌鎬(イ・チャンホ)九段もその一人だった。
スポーツ選手などへの兵役免除は国力が十分でなかった時代に「国威発揚」や「文化創出」などの目的で始まった制度だが、最近は徐々に問題視されつつある。スポーツそのものよりも、兵役免除の恩恵を受けられるかどうかがすぐ話題になるからだ。今回のアジア大会に出場した国の中で韓国と同じく兵役免除の制度がある国はイランだが、そのイランとサッカーの決勝トーナメント1回戦で対戦した際、メディアから「兵役免除ダービー」などとやゆされた。かつては野球の韓国代表チームが兵役を終えていない選手ばかりになったことがあるが、このときも「兵役免除遠征チーム」などと呼ばれた。あるサッカー選手は「4分間だけ試合に出場して兵役免除」になったケースもある。ある個人種目で韓国選手同士が金メダル争いで対戦した際、すでに免除を受けていた選手が勝ち、その場の雰囲気が非常に具合悪くなったことがある。
汗と努力で国民に誇りを持たせるスポーツ選手や芸術家たちに、兵役免除という恩恵を与えることには今も賛成の声が根強い。これに対して「不公平」との理由で「もうやめるべき」と主張する声もある。スポーツ選手や芸術家たちにその才能と実力を維持しながら、兵役に代わるさまざまな方策について検討が必要だろう。さらにもっと重要なことは、神聖な国防の義務が、できればやりたくない非常に面倒なことのように認識されないようにすることだ。
李明振(イ・ミョンジン)論説委員