昨日ある知人がショートトラック韓国代表の沈錫希(シム・ソクヒ)選手の写真をSNS(会員制交流サイト)に投稿した。2014年のソチ冬季オリンピックで金メダルを獲得した時の写真で、沈選手は韓国代表のユニホームを着て金メダルを首に掛けていた。当時まだ女子高生で黒縁眼鏡を掛け、恥ずかしそうに笑顔も見せていた。ニキビも幾つかあった。「こんなにかわいらしい子になんということを」とその知人は嘆いた。「沈錫希選手に対する性的暴行事件」が大きく報じられた影響で、検索サイトのランキングでもその名前は常に上位に入っている。沈選手がスケートを始めたのは8歳の時だ。「幼い心が出口のないところにずっと捕らえられていた」という嘆きのコメントもあった。

 沈選手の弁護士は一昨日、事件の全容を公表した。それによると「(沈選手は)およそ4年にわたり韓国代表チームのチョ・ジェボム元コーチから常習的な性的暴行を受けていた」という。4年ということは沈選手が17歳の時、つまりソチ・オリンピックの前から昨年の平昌オリンピック直前までだ。チョ元コーチはこれを強く否定した。チョ元コーチは沈選手に対して常習的に暴行を加えた容疑で昨年9月に懲役10カ月の宣告を受け服役中だ。今回暴露された性的暴行は国が管理する泰陵選手村や鎮川選手村、韓国体育大学のスケート場などあらゆる場所で行われていたという。

 選手にとってコーチとは一体いかなる存在であり、またなぜこのような事件が起こったのか。ある選手はコーチのことを「絶対者」と語る。一度選手の道に入れば勉強とは完全に一線を画すが、このような状況だと大会への出場や上の学校への進学、実業団チームに進む時など人生の岐路ではコーチの一言が大きく影響するという。また日常の練習から合宿に至るまで、二人はほぼ全ての時間を共に過ごす。一度嫌われたらそれで終わりだ。沈選手も「スポーツを続ける考えはないのかといつも脅迫された」と語っている。

 米ミシガン大学体操チームや米国代表で担当医を務めたラリー・ナサールはなんと30年にわたり女子選手たちに性的暴行を繰り返していた事実が明らかになり、昨年175年の懲役刑を受けた。ナサールから暴行を受けた選手たちが後に母親になり、勇気を持って証言台に立つまで、一連の問題は徹底して隠蔽(いんぺい)されていた。それまでナサールは米国体操界に大きく貢献した人物として一身に称賛を受けていた。しかしシモーン・バイルスら今の代表選手をはじめ元代表選手ら150人の証言が続いたことで真実は明らかになった。

 コーチと選手は時に主従関係のように見えることもある。ミー・トゥー運動によって多くの被害者が声を出しているが、スポーツ界ではまださほど広がっていない。大韓体育会(KOC)と文化体育観光部(省に相当)は金メダルや北朝鮮とのスポーツ交流以外の問題にはさほど関心がないようにも見える。沈選手が告白した今回の重大問題も一刻も早く事実関係を明らかにし、他にも被害者がいないかしっかりと調べなければならない。

閔鶴洙(ミン・ハクス)論説委員

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