韓国の「江南左派」という言葉の元祖と言える「リムジン・リベラル」という言葉は1960年代の米国で誕生した。ニューヨーク市長選挙を前に、リムジンを乗り回しながらも左派のふりをする米民主党の金持ち候補を攻撃する際に作られた言葉だった。「キャビア左派」「シャンパン社会主義者」もいる。韓国では「(ソウル市内の高級住宅地)江南に住んだことがあるから分かるが、江南に住む必要なんてない」と言った資産100億ウォン(約10億円)の政府高官がその部類に属する。幼い少年のように「虹を追いかける」と言っていたその人物は先日、大使になった。

 最近、このような人々のことを指す「進歩ジジイ」という新語が登場した。おととい辞任した大統領府報道官がその典型だ。口では「正義」「公正」「平等」と言いながら、裏では特別待遇だと疑われてもおかしくない銀行融資を受けて数十億ウォン(数億円)の不動産投機をしていた。20-30代の若者たちはこのような偽善的進歩系(革新系)にうんざりしているという。事実、彼らに「進歩」という言葉はふさわしくない。社会を進歩させるどころか退化させているのだから、あえて言うなら左派「ジジイ(韓国語でコンデ)」ぐらいがふさわしいだろう。

 国立国語院によると、「コンデ」は「老人」の隠語とされている。しかし、実生活で使われる「コンデ」という言葉は年齢に関係なく、しきりに何かを教えようと説教する人々を意味する。前大統領府報道官は辞任する日まで人に説教を垂れたため、20-30代の若者にとって「ジジイの代名詞」となった。大統領府担当記者らに南北問題などに関して訓示したかと思うと、「頭が固い報道責任者から下される指示に疑問を持ちなさい」と言ったのだ。その話を伝え聞いた人々は、大統領側近が再開発不動産を購入して相場差益を手にしたという裏の顔に怒りを覚えている。

 「妻のせい」にするのも典型的な「ジジイ」がやることだ。彼は「自分は知らなかった」と言ったが、それが事実なら、妻はこっそり夫の大統領府在職証明書と源泉徴収書を手に入れ、実印を持って夫の高校の後輩が支店長を務めている銀行に行き、10億ウォン(約1億円)融資してもらったことになる。「ジジイ」は世間の人々の目を節穴だと思っているようだ。

 現政権はとりわけ「偽善ジジイ」だらけだ。自分の子どもは留学させておきながら、他人の子どもは私立高校にも入れさせない。他人の偽装転入には懲役刑を食らわせ、自分の偽装転入を恥じることもない。税金をできるだけ払わなくて済むように実際の取引価格よりも低い額の契約書を書き、家族間で不動産取引をする。大統領の娘もその夫から家を贈与してもらった後、それを売って外国に引っ越した。「なぜだ」と多くの人々が疑問を感じているのに、「知る必要はない」という態度を取っている。これらの人々が人様に対して平気な顔で「正義と公正」を説教する。「ネロナムブル」(自分のことならばロマンス、他人のことならば不倫=同じ失敗をしても、自分に甘く他人に厳しいという意味)を国語辞典に載せるべきだという声が世間にあるというのに、ややもすれば「正義」の意味も変わってしまいそうだ。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)論説委員

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