韓国・大田地裁は先日、銃を持って戦闘を行うインターネットのゲームをしてきた20代の兵役拒否男性に対し「真正な良心に基づく兵役拒否」とするその主張を認めて無罪を言い渡したという。この男性は「執銃(銃を携帯すること)を認めない宗教的教えに従い兵役を拒否した」と主張していた。銃を使って他人を殺害するゲームを楽しみながら「執銃拒否」を訴えるのはどう考えても矛盾している。大法院(最高裁に相当)も「兵役拒否者が状況によって自分の主張とは違った行動を取るのであれば、その主張や信念は真実とは言えない」との判断を下しており、またその宗教団体も暴力的なゲームには注意するよう教えているという。男性は「幼い時に一時的にやったこと」と弁解しているが、それでもこの男性に対して「良心」とは何か、あるいは「良心」を自分の都合が良いように利用しているだけではないのか、ぜひとも問いただしたいものだ。

 入隊通知書を受け取る11日前に宗教団体の信徒となり、兵役を拒否した男性にも無罪が宣告された。また「兵務庁が主管する代替服務は受け入れられない」として兵役に代わる勤務まで拒否した男性にも無罪が宣告された。ここ5カ月間に行われた「良心的兵役拒否」を巡る一審と二審の裁判135件のうち、有罪は1件もなかった。逆に一審と二審で無罪が宣告され、大法院での裁判中に被告自ら考えを変えて兵役に応じたケースもあったという。これでは兵役拒否者を洗い出すべき裁判所の裁判がまともに行われているのか疑わざるを得ない。もしかすると機械的に無罪判決を乱発しているだけではないのか。

 大法院は昨年11月、兵役拒否に関する判例を14年ぶりに覆したが、その時から「本当の良心かどうか」を判断する基準があいまいになったとの指摘が相次いでいる。人間の心を判別するなど実際はほぼ不可能なことだ。ところが大法院はそれが可能と考えている。直接の証拠がなくとも証明できるというのだ。これに先立ち憲法裁判所は良心的兵役拒否者を無条件処罰するのではなく、今年中に代替服務制度を立ち上げるよう求めたにもかかわらず、大法院は何かに追い立てられるように判例を覆した。このような状況で今年2月、下級審では「暴圧的な父の下で育ち、非暴力という信念を持つようになった」と主張する予備軍訓練拒否者にも無罪が言い渡された。「兵役拒否」の理由は今や宗教的な信念にとどまらず広がりを見せているのだ。憲法裁判所や大法院の判決によって韓国でも良心的兵役拒否が認められ、代替服務制度を導入せざるを得ない状況になった。だとすれば何よりも「虚偽の良心」や「意図的な兵役拒否」を徹底して摘発できる仕組みが必要になるだろう。

 韓国は69年前の6・25戦争(朝鮮戦争)で南侵を受け、国土が廃虚となる地獄を味わった。今も核兵器や生物化学兵器で武装した120万人の朝鮮人民軍と目と鼻の先で対峙(たいじ)している。北朝鮮政府は世界最悪の暴力集団だ。ところが韓国は今、うその平和ムードに酔いしれ、安全保障におけるぜいたくを楽しんでいる。このような国と国民は間違いなくいつかその代償を支払うようになるだろう。

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