▲東京=李河遠(イ・ハウォン)特派員

 新天皇即位に関する企画記事を連載している中、ある読者が朝鮮日報社に電話をかけてきた。「この記事を掲載した意図が気になる。韓国は日本をロールモデルにすべきだというのか。客観性のない記事だと思う」ということだった。

 本社の読者サービスセンターが送ってくれたメールで読者の抗議を知り、29日付1面トップで書いた「戦後世代の天皇の登場…日本、未来へリセット」=日本語版未掲載=という記事を読み返してみた。この記事は新元号「令和」時代を迎えるにあたり、日本が新たな未来に備えているという内容だった。「新天皇即位と五輪開催で上昇している国運を利用して『日本をリセット』することにより、国際社会で飛躍しようとしている」というのが主な内容だった。

 この読者のメッセージは、東京特派員出身のジャーナリストS氏が以前書いた文を思い起こさせた。20年前に東京に赴任していたS氏は、2017年に「韓日問題は唯一残った報道の聖域だ」と述べた。「日本に友好的な記事を書いたら『親日派だという烙印(らくいん)を押されてしまうのでは』とおのずと用心するようになる」からだという。

 皇居の向かい側にあるオフィスに出勤するようになってから1年もたっていないが、S氏の言葉を何度もかみしめる機会があった。反日感情が最高潮に達している今日このごろの状況で、「日本たたき」の枠組みから外れた記事を書くことに負担がかかる面があるのは事実だ。昨年末、韓日関係が一筋の光もない暗闇に閉じ込められたころは「お前は日本人か」とも言われた。後で知ったことだが、他社の特派員でも同様の経験がない人の方が珍しかった。すべての報道機関で、日本の記事については、ほかの記事よりも数倍「自己検閲」をして報道するのが韓国的な状況だと言えるだろう。

 このような状況でも、朝鮮日報が令和時代に関する記事を1面トップで書いて注目している理由は、日本で巻き起こっている令和旋風が尋常でないように見えたからだ。85歳の明仁天皇の生前退位決定は、国家指導者として大変賢明な決断だった。30年前の昭和(裕仁)天皇の死去による暗うつとした雰囲気の中で平成時代が始まった時とは違い、最近の日本は新たな機運にあふれている。20年間の不況を経てよみがえった経済を再び停滞させたくないという意志が感じられる。このムードを来年の東京五輪まで保ち、国のアップグレードを実現させたいという構想がうかがえる。

 韓国社会が究極として追求するロールモデルに日本がなることはない。依然として多様性よりも画一性の方が大きく見える国を、そのまままねる必要はないだろう。しかし、象徴に過ぎない天皇の交代儀式を通じて内部の確執を最小限に抑え、広く未来について語る点には注目すべきだ。過去に縛られ確執を拡散する国と、前を見据えて走っている国の差が大きく広がるのはあっという間だ。

東京=李河遠(イ・ハウォン)特派員

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