日本の金融庁が「人生100年時代、夫婦の老後資金として2000万円の蓄えが必要になる」と資産形成を促す報告書を公表し、安倍政権が逆風にさらされている。日本政府は波紋が拡大すると「正式な報告書として受け取らない」と表明したが、野党は「年金政策の失敗の責任を国民に押し付けている」として、この問題を来月の参議院選挙の争点にする構えだ。共同通信は16日、最近の世論調査の結果として、安倍内閣の支持率が47.6%で先月から2.9ポイント低下したと報じた。日本の老年層が老後資金として2000万円の蓄えが必要だとすれば、韓国の老年層はいったいどのくらいの資金を準備するべきなのか。

■「韓国は3300万円不足」

 本紙が17日、日本の年金についての専門家である韓神大のペ・ジュンホ名誉教授(国民年金研究審議委員長)に依頼し、日本の金融庁が試算したものと類似の方式で韓国の老後資金を推算してもらった。その結果、韓国では老後資金として3億3000万ウォン(約3300万円)が必要となることが分かった。

 日本の金融庁のシミュレーションと同様に、韓国の65歳以上の夫と60歳以上の妻が二人とも無職と仮定した場合、夫婦の平均的な収入は国民年金45万ウォン(約4万5000円)、基礎年金40万ウォン(約4万円)、つまり公的年金が合計85万ウォン(約8万5000円)、不動産所得などその他の収入が21万ウォン(2万1000円)だ。これに加え、平均貯蓄額5371万ウォン(約537万円)を、夫婦が共に生活する19年間で毎月24万ウォン(約2万4000円)ずつ切り崩して生活資金に充てると仮定すると、夫婦の収入は月130万ウォン(約13万円)となる。

 一方、韓国国民年金研究院が2017年に実施した老後準備実態調査で、回答者たちが考える1か月の適正生活費は夫婦の場合243万ウォン(約24万3000円)、単身者は154万ウォン(約15万4000円)だった。夫婦の期待余命(65歳の男性は19年、60歳の女性は27年)を勘案すると、夫婦が共に生存している19年の間は月に113万ウォン(約11万3000円)、妻だけが生存している8年間は月に76万ウォン(約7万6000円)ずつ不足することになる。つまり、夫婦が生存している期間に2億5764億ウォン(約2600万円)、妻1人となる期間に7296万ウォン(約730万円)、併せて3億3060万ウォン(約3300万円)の老後資金が不足する計算だ。老後準備実態調査で明らかになった最低限の生活費(夫婦で月176万ウォン、単身者で月108万ウォン)を代入しても、1億3560万ウォン(約1360万円)が不足するとの試算が示された。

■「韓国の老年層、平均73歳まで働く必要」

 韓国と日本でこのように差が出たのは、基本的に老後に受給する年金の額が大きく異なるからだ。日本の老年夫婦の場合、国民年金(韓国の基礎年金に相当)と厚生年金(韓国の国民年金に相当)を合わせて約19万1880円を受給できるが、韓国の老年夫婦は基礎年金40万ウォン、国民年金45万ウォン、合計85万ウォン(約8万5000円)しか受給できない。韓国の国民年金は1988年に導入されたが、日本の厚生年金は1942年に導入された。

 また、日本の厚生年金は保険料率が所得の18.3%だが、韓国の国民年金は1998年以降20年にわたり所得の9%に据え置かれている。日本の保険料率は韓国の倍以上というわけだ。

 ペ教授は「日本の老年層は、各世帯の平均貯蓄額が2484万円となっており、足りない老後資金2000万円を補うことができる」とした上で「韓国の老年層の平均貯蓄額は5371万ウォン(約537万円)で、これを夫婦が共に生存している19年間で切り崩しながら使うと仮定しても3億3000万ウォンほど不足する」と説明した。ペ教授は「今後寿命がもっと長くなることを考えると、韓国の場合は追加で1億-1億5000万ウォン(約1000万-1500万円)、合わせて4億3000万-4億8000万ウォン(約4300万-4800万円)ほど蓄えておく必要があるだろう」と指摘した。

 ペ教授は「これだけ老後への備えが不足していることを考えると、韓国の老年層は70代前半(実質的な引退年齢:男性72.9歳、女性73.1歳)まで労働市場に残らざるを得ない」と説明した。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で高齢労働者の割合が最も高い国になる、というわけだ。

 こうした問題を解決するために、住宅年金(所有住宅を担保に、老後の生活資金を受け取る年金制度)を活性化すべきとペ教授は主張した。住宅年金の平均受給額(2018年基準で月73万ウォン=約7万3000円)を手にする場合、老後資金の不足額3億3000万ウォンを9400万ウォン(約940万円)ほど減らすことができる。しかし、韓国の老年層は家を子どもに譲るという意識が強く、住宅年金への加入者は現時点で6万人程度にとどまっている。

 韓国保健社会研究院のユ・ソクミョン研究委員は「まずは定年延長などによって実質的な国民年金の加入期間を延ばし、死角地帯(年金加入期間が短すぎるなどの理由で年金を受給できない層)を解消していくなど、公的年金の機能を強化する必要がある」として「韓国の老年層は住宅などの不動産を多数所有しているため、住宅・農地年金を活性化し、年金の不足分を補えるよう誘導していくべき」と指摘した。

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