北朝鮮が最近相次いで新型短距離弾道ミサイルを発射していることを受け、これに対する防衛体制構築のため米国の複数の識者が「韓国は米国のミサイル防衛体制(MD)に参加すべきだ」と主張しはじめた。米国のエスパー国防長官が「中距離ミサイル配備」について言及し、また米国からの「安全保障請求書」も官民双方において本格的に議論されている。韓国政府は2017年、中国がTHAAD(米国の高高度防衛ミサイル)配備に反発した際「米国のMD参加」「THAADの追加配備」「韓米日軍事同盟」の3つをしないとするいわゆる「三不」の方針をすでに表明している。

 ミサイル問題に詳しい米戦略国際問題研究所(CSIS)のイアン・ウィリアムズ氏は12日(現地時間)、北朝鮮が最近相次いで発射している短距離弾道ミサイルについて「飛行高度50キロ未満と低く飛ぶので、(韓国の)レーダーでは捕捉が難しく、パトリオット・ミサイルでは迎撃が難しい」「北朝鮮のミサイル発射を早期に感知できるよう、レーダーによる監視機能を強化することが必要だ」と指摘した。可能な限り多くのレーダーで北朝鮮のミサイルを探知し、迎撃ミサイルを撃たねばならないということだ。

 ウィリアムズ氏は「そのため韓国政府は2017年に中国と行った三不の約束を破棄し、米国のMD体制に参加しなければならない」「米国のMD体制は北朝鮮の短距離ミサイル発射やその飛行を感知できる資産が多い」などとも説明した。ウィリアムズ氏はさらに「(米国のMD参加により)韓国に配備されたTHAADやパトリオット・ミサイル、そして韓国の外にあるTHAADやパトリオット・ミサイル部隊とレーダー機能が統合されれば、強力な探知機能を持つようになるだろう」とも主張した。かつて米ホワイトハウスで大量破壊兵器調整官を務めたギャリー・セイモア氏もこの日、米政府系放送「自由アジア(RFA)」に出演し「韓国と在韓米軍にとって脅威となる北朝鮮の新たな短距離弾道ミサイル開発に対し、米国は対抗策を模索すべきだ」と発言した。

 韓国国内の専門家も「韓国が米国のMDに参加すれば、北朝鮮の挑発に対する対応力を高められる」と考えているようだ。峨山政策研究院安保統一センターのシン・ボムチョル所長は「MDに参加すれば、米国全体のミサイル防衛網と連動するため正確な情報把握にプラスになる」と指摘した。さらにある韓国軍関係者は「現在、韓国軍はMDに編入されてはいないが、事実上MDに編入されているようなものだ」「しかし名目的にMDに編入されれば、パトリオットなど追加の迎撃資産が増強される効果が出てくるだろう」との見方を示した。

 問題は中国の反発だ。韓国政府はTHAAD問題が表面化して以降「三不政策」を掲げてきたが、MDへの編入が政策として取り上げられるだけで中国が反発する可能性が高い。これについてある韓国政府高官は「基本的に北朝鮮と対話を行う際、MD加入を取り上げる必要はない」「北朝鮮の核問題が解決されない場合、MDは使用可能なカードの一つになるが、現時点では曖昧戦略を採った方が良い」との考えを示した。ただしMDに編入されれば、最近トランプ政権が韓国に対して圧力を強める防衛費分担金をめぐる圧力から抜け出せるとの見方もある。上記の韓国軍関係者は「MDに編入されれば、韓半島において中国の弾道ミサイルの軌跡を早期に捕捉できるため、結局は米国にとって非常に大きな利得になる」「我々も米国に対して言うべきことが多くなる」と指摘した。

 ただし韓国政府は公式的には「MDへの編入はない」としている。韓国国防部(省に相当)のある関係者は「韓国政府はMDに入らないことを明確にしてきた」「韓国型のミサイル防衛システムを独自に構築している」などと明言した。

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