韓国における初等学生(小学生)1人当たりの公的支出が経済協力開発機構(OECD)平均に比べて年間で305万ウォン(約27万5000円)以上高いことがわかった。中高校生もOECD平均より286万ウォン(約25万8000円)高かった。教師の給与は国公立学校勤続15年の場合、OECD平均よりも最大で1338万ウォン(約121万円)高かった。韓国教育部(省に相当)と韓国教育開発院が10日「OECD教育指標2019」の主な指標を分析して発表した。

 この教育指標はOECD加盟37カ国と非加盟9カ国の計46カ国を対象に調べたもので、各国の教育環境や経済力を比較した基礎資料となる。これらの結果について教育関係者の間では「金はしっかりと使っているが、教育の国際的な競争力は何も改善されていない」などの指摘が相次いでいる。公教育の質を高める必要性を指摘する声も相次いでいる。成均館大学教育学科のペ・サンフン教授は「韓国の教師たちは国家公務員で、社会的・法的地位が保証されている。そのため給与も外的な待遇も良い方だ」「教育関連予算のほとんどが人件費として使われているので、教師に対する職務訓練を強化するなどして、実質的な教育の質を高めていかねばならない」などと指摘した。

■高校教師1人当たりの生徒数はOECD平均以下

 2017年における韓国の高校教師1人当たりの生徒数は13.2人で、これはOECD平均(13.4人)よりも少なかった。高校教師1人が担当する生徒数がOECD平均よりも少なくなったのは、1996年に調査が始まって以来はじめてのことだ。小学校教師の場合は1人当たりの児童数が16.4人で、これはOECD平均(15.2人)との差が前年に比べて小さくなった。中学校教師は1人当たりの生徒数が14人で、これはOECD平均(13.3人)とほぼ同じになった。このように児童・生徒数は減少しているが、政府や親が負担する教育の公的支出はOECD平均に比べて多い。

 児童・生徒1人当たりの年間の公的支出は小中高校はOECD平均よりも多いが、大学以上になると低くなることもわかった。2016会計年度で小学生への公的支出は1314万ウォン(約119万円)で、OECD平均の1009万ウォン(約91万円)に比べて305万ウォン(約27万5000円)高かった。中高校生への公的支出は1473万ウォン(約133万円)だったが、これはOECD平均の1187万ウォン(約107万円)よりも286万ウォン(約25万8000円)高かった。大学生以上の公的支出は1249万ウォン(約113万円)で、OECD平均の1853万ウォン(約167万円)と比べて604万ウォン(約55万円)少なかった。

 これとは別に国際的に見て韓国の児童・生徒の学力が低下傾向にあることを示すシグナルも出ている。OECDが行っている「生徒の学習到達度調査」(PISA)によると、「読解力」が必要なレベルに達していない割合は韓国では13.6%(2015年)で、09年(5.8%)に比べて2倍以上増加した。「数学」も09年の8.1%から15年は15.4%、「科学」は6.3%から14.4%に増えていた。

■教師の授業時間はOECD平均よりも100時間以上少ない

 韓国における教師1人当たりの授業時間は昨年の時点で小学校675時間となり、これはOECD平均よりも108時間少なかった。また中学校は526時間で183時間少なく、一般高校も547時間で120時間少なかった。いずれも100時間以上の差だ。9年間の義務教育(小学校と中学校)のうち、小学校入学から中学1年生までの7年間は試験がなくなったことがまずは影響している。また全国に17人いる特別市・広域市・道などの市・道教育監(教育委員会に相当する教育庁のトップ)のうち、14人が左派で全国教職員労働組合(全教組)とも近く、学生(児童・生徒・学生)人権条例や教師の業務削減などを強調していることから、教師たちの授業や業務の負担が減少傾向にあるからだ。

 小中高校教師の年間の給与はOECD平均よりも高かった。1年目はOECD平均よりも少ないが、15年目になると逆転していた。OECDは基本給に各種手当てや福利厚生費をプラスし、これに各国の物価を反映して指数として給与を算出している。韓国における小学校教師の1年目の年収は3869万ウォン(約349万円)で、OECD平均の3937万ウォン(約355万円)よりもおよそ68万ウォン(約6万1000円)少なかった。しかし15年目になるとOECD平均の5472万ウォン(約494万円)よりも1338万ウォン(約121万円)多くなった。中学校と高校でも同じく15年目になるとOECD平均を大きく上回っていた。これについて韓国教育部の関係者は「公務員の号俸を適用せず、学校と教師が給与の面で契約を結ぶ国もあるので、単純な比較が難しい側面もある」とコメントした。

ホーム TOP