昨年11月、檀国大学天安キャンパスの学生会館やジムなど5カ所に文在寅(ムン・ジェイン)大統領を批判する壁新聞が掲示された。右派青年団体「全国大学生代表者協議会(全大協)」所属のキムさん(25)が張った壁新聞だった。中国の習近平国家主席の顔が印刷された壁新聞には「私(習近平主席)の忠犬・ムン・ジェアン(ジェアン=災難の意、文大統領の名前をもじったもの)は高位公職者犯罪捜査処(公捜処)や連動型比例代表制を通過させ、総選挙で勝利した後に米軍を撤退させ、完ぺきな中国の植民地になるように準備を終えるだろう」と書かれていた。政府を批判する壁新聞でよく見られる内容だ。

 ところが、その壁新聞を張ったキムさんが起訴されたことがこのほど明らかになった。容疑は建造物侵入罪だった。建造物侵入罪とは、人が居住・管理する建物・船舶・航空機などに無断侵入した場合に適用され、3年以下の懲役または500万ウォン(約47万円)以下の罰金に処せられる。大田地検天安支庁は、キムさんが大学を管理する職員などから出入りの許可を受けずに入ったとして100万ウォン(約9万円)の罰金刑で略式起訴した。常に開かれている大学のキャンパスに入ったことに対して、「不正侵入した」として裁判にかけたものだ。

 管轄の天安・東南警察署はこれについて、「学校側から通報があり、捜査に入ることになった」と主張した。しかし、檀国大学天安キャンパス側は9日、「通報したのではなく、壁新聞が張られていることを業務協力の次元で知らせた」と言った。檀国大学学生課の関係者は「過去にも似たような壁新聞が張られていたことがあって、その時、警察が『同じことがまた起こったら教えてほしい』と言ったからだ」と説明した。

 警察関係者は「通常の学校で起こる活動ではなく、別の目的を持って無断で入ったなら建造物侵入容疑を適用できる。さまざまな状況を考慮して適用すべき法律を検討した」と語った。

 キムさんはこの日、本紙の電話取材に「現政権を批判したという理由で悔しくも追い込まれた。正式な裁判を請求して潔白を証明したい」と語った。そして、「学校に入った時、車の遮断機が自動的に開き、建物のドアも開いていたので、すぐに入って壁新聞を張った。立ち入りを阻まれながら無理やり入ったわけでもないし、窃盗や器物損壊など別の犯罪をしてもいない」と言った。

 今回の事件の当事者である大学側も「私たちが犯罪行為だと考えて通報したわけでもないし、別に被害を受けたという事実もない。政治色を帯びた壁新聞でも表現の自由があるのでむやみにはがすことはない。大学キャンパスには近隣住民をはじめ、営業担当者や配達員などさまざまな人が制約なしに出入りするが、建造物侵入罪とされるなんて理解できない」と話す。檀国大学の学生チェさん(23)は「政治に関心を持ち、自分の意見を表現する自由は誰もが享受できる権利だ。大学キャンパスに単に壁新聞を張る行為に対して、名誉毀損(きそん)でもなく不法侵入罪を問うなんて、常識からみても理解できない」と語った。

 昨年5月、ソウル市中区のプレスセンターでビラをまいた全大協所属のキム・ジョンシクさん(33)も建造物侵入容疑で警察に立件された。キム・ジョンシクさんは昨年5月23日午前7時ごろ、プレスセンターの19階の窓から外にビラ500枚をまいた。ビラには映画『アベンジャーズ』の悪役サノスと文在寅大統領の顔を合成した写真が印刷されていた。また、脱原発や公捜処など政府の主要政策を批判する文言もあった。キム・ジョンシクさんは近く起訴意見付きで送検される予定だ。プレスセンターは、レストラン・商店・オフィスなどが入居している複合ビルで、檀国大学キャンパスと同様、誰でも出入りできる。警察は「プレスセンターの建物を管理するソウル新聞施設総合管理部が通報してきたため、処理したものだ」との見解だ。これに対してキム・ジョンシクさんは「ビラをまきに行ったプレスセンター内はすべて開放されていた」と主張している。

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