▲ノ・ソクチョ政治部記者

 イランはことのほか格式張った国だ。イランの商店に行って「これはいくらですか」と尋ねると、「あなたに比べれば、これはあまりに価値がない」と言って金を受け取ろうとしない。店の主人はもちろんアルバイトの店員までもが、代金を払おうとする客に少なくとも2、3回は遠慮する「ふり」をして、客が「お願いですから」と頼んでようやく、仕方なく金を受け取る。

 お互いに心地よい言葉をやりとりすることで格式を整えるイランの文化を、ペルシャ語では「タローフ」という。これは、イランに進出する外国実業家にとって必須の熟知事項だ。「ああ、それいいですね」と言うイランのバイヤーの好意的な一面だけを見ていては、後で慌てふためく可能性が高い。彼らは物事をあいまいに話し、心の中では嫌っていても、表向きは好ましいとして格式を整えるからだ。

 外交でも同様だ。2013年から15年にかけてイラン核交渉たけなわだったころ、米国の外交官は、やるべきことが他国のケースに比べ倍もあったという。イランの外交官が話していることがどこまで真意なのか、「解読」しなければならなかったからだ。イランの社会科学者キアン・タジバクシュ氏は「米国でイエスはイエスだが、イランでイエスは、イエスであることもそうでないこともあり得る」として、「外交問題で慌てないようにするには、『タローフ』を理解しなければならない」と指摘した。長期間イランの生活と文化に関心を持ち、理解の幅を広げてこそ、イラン人の真意が何なのか理解でき、イラン人を説得する能力も備わる、というわけだ。

 最近、「タローフの国」イランが韓国を公然とののしるという、異例の事件が起きた。イラン外務省のムサビ報道官は1月21日、「韓国国防部(省に相当、以下同じ)は『ペルシャ湾』の歴史的な名称すら知らずに、どういう知識と正当性で軍隊を送るのか」と、「ストレートな」非難を行った。その前日、韓国国防部は派兵を発表する際、ホルムズ海峡内の海域を「アラビア・ペルシャ湾」と呼んだが、これが間違いだというのだ。イランは「ペルシャ湾」という名称を使うが、「アラビア湾」はイランと敵対関係にあるサウジなど一部の国がこだわっている名前だ。ある国が韓国の反対にもかかわらず、東海に派兵し、派兵地域を「日本海」と呼ぶのと同然の外交的欠礼を犯したことになる。

 韓国政府は、イランの反発が強まるや、今になって「なだめ役」として高官級の特使の派遣を検討しているという。典型的な「死後薬方文」(後の祭り)だ。あらかじめイランに真心を見せ、きちんと了解を求めていれば、今回のような露骨な反発は避けられたのではないだろうか。韓国外交部の中東地域担当局長は、「ホルムズ派兵」問題関連でイランに出張したことが一度もないという。韓国外交部が「イラン外交」にどれほどアマチュアかをうかがわせる話だ。

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