東亜日報系のテレビ局「チャンネルA」の司法担当記者が検察と癒着し、盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団の柳時敏(ユ・シミン)理事長による不正疑惑について、「情報提供に応じなければ、検察から徹底捜査を受けることになる」などと取材先を脅迫をしていたとするMBC(文化放送)の連日の報道が波紋を呼ぶ中、MBCに情報提供を行った人物は現政権の熱狂的支持者のC氏(55)であることが3日までに判明した。

 C氏は横領、詐欺などで服役した経歴があり、かつて検察の捜査に協力した経験に基づき、検察の内部事情を知る金融専門家として振る舞い、与党寄りのメディアに出演し、現政権を積極的に擁護した。法曹界関係者は「情報提供の純粋性が疑われる」と指摘した。

 自らを「情報提供者X」と称するC氏は、インターネットメディア「ニュース打破」に尹錫悦(ユン・ソギョル)検察総長をはじめ検察関係者に関する情報提供を行い、左派系論客、金於俊(キム・オジュン)氏のラジオ番組に出演では、チョ・グク元法務部長官の妻、チョン・ギョンシム氏を擁護した。

 MBCは3月31日、チャンネルAの司法担当記者と「尹検察総長の最側近」の検事長との癒着疑惑も報じたが、情報提供者はC氏だった。C氏は詐欺事件で収監中のイ・チョル元バリュー・インベストメント代表の代理人として、チャンネルAの司法担当記者と会っていた。C氏はチャンネルA記者と検事長の通話内容を聴かせ、自分が知っている「尹検察総長の最側近」の検事長の声だと判断したとMBCに告げた。

 C氏はフェイスブックでは「イ○○」という仮名で活動した。C氏は自分が今回のMBCによる報道の情報提供者でありながら、第三者のように報道内容を解釈、宣伝した。3月31日にMBCが最初に報道する1週間前の24日、C氏はフェイスブックに「今週末には柳時敏氏に一杯おごれと言うつもりだ。なぜおごらなければいけないのかは金曜日ごろには分かるはずだ(笑)」と書き込んだ。MBCによる報道を予告した格好だ。しかし、MBCによる報道が遅れそうになり、C氏は翌25日、「あ、柳氏には来週、一杯おごれと言わなきゃ。今週飲めるはずだったが、日程が合わず残念だ(笑)」と書き込んだ。また、MBCによる報道の前日に当たる30日には「突然夢にあす『MBCニュースデスク』を見ろという神のメッセージが…何だろう、なぜだろう(笑)」と書いた。MBCから翌日に自身の情報提供に基づくニュースが放送されることを知らされたとみられる。その後、4月2日朝、C氏はKBSラジオに電話で匿名インタビューを受け、「検事長とチャンネルA記者の2カ月間の通話記録を互いに提出しさえすれば、事実かどうかが明らかになる」とし、「チャンネルA記者は(癒着が)事実でないと主張するなら、検事長の音声ファイルを公開すべきだ」と圧力をかけた。フェイスブック上では再び、インタビュー内容のリンクを貼り、「KBSラジオにチャンネルA記者と会った当事者が出演したが、チャンネルA幹部も介入していたというのは大変なことだ」と書いた。本人がインタビューで「(チャンネルAの)幹部も皆がこれを知っている」と主張したことを取り上げたものだ。

 MBCは3月31日から4月2日まで連日報じた。C氏は2日、MBCニュースの放送前に「きょうのニュースデスクでチャンネルAと検察の脅迫取材第3弾が放送されるという。きょうも必見だ」と書いた。自身が直接会ったチャンネルA記者の写真を掲げ、「果たしてこいつは一人で悪魔のようなことをしでかしたのか。チャンネルAのL記者と癒着した尹錫悦の最側近の検事長も捕まえて、生きたままで○○○(原文伏せ字)すべきだ」と主張した。

■「情報提供者X」として振る舞いチョ・グク氏ら政権擁護

 C氏は2月16日にフェイスブックに「犬検察総長、尹錫悦、きょう悪夢を見たら俺のせいだと思え」と書き込んだ。その翌日、インターネットメディア「ニュース打破」は尹総長の妻の株価操作関与疑惑を報じた。報道後、C氏はさらに「見たか。私の言った通りだろう。尹錫悦は昨日悪夢を見るだろうって」と書いた。この一件でもニュース打破への情報提供者がC氏だった可能性が高いとみられる。

 ニュース打破は「拘置所に収監されている囚人として、長期間検察の捜査に関与したと主張する『情報提供者X』が訪ねてきた」「情報提供者Xは金融犯罪捜査の司令塔であるソウル南部地検で検察の恥部を目撃した」などと報じた。ニュース打破は証言を土台に検察内部の問題を批判する「罪囚と検事」と題するシリーズ報道を昨年8月から2カ月間続けた。

 C氏はチョ・グク元法務部長官の問題がピークを迎えていた昨年10月、ラジオ番組「金於俊のニュース工場」に出演し、検察の捜査を批判するとともに、「(尹総長の妻の)チョン・ギョンシム教授が投資した企業の犯罪行為を解明しようとして、チョン教授に波及するというなら分かるが、これは逆にチョン教授をターゲットにして始まったものであり、正常ではない」と主張した。当時金於俊氏はC氏を「過去20年間、M&A市場で活動した専門家」と持ち上げた。C氏は3月26日、チョン・ギョンシム氏の裁判記事のリンクを張り、「(尹総長の義母による)数十億ウォンの残高証明書偽造事件について、まだこんなごみ記事を書き立てる記者を見ると、米粒をBB弾に詰めてとことん撃ちまくりたい(笑)」とも発言した。

 最近C氏は特に総選挙で比例区に候補を擁立している「開かれた民主党」(ヨルリン民主党)を積極的に擁護している。C氏は同党の比例候補が記者会見を開いた3月22日、「尹錫悦検察総長は高位公職者犯罪捜査処(高捜処)の捜査対象第1号だ」とし、「チョ・グクは無罪」と主張してきた同党の崔康旭(チェ・ガンウク)、黄希錫(ファン・ヒソク)候補と共に撮影した写真を掲載し、「ぶち壊そう!尹錫悦犬検察どもを(笑)」と書き込んだ。写真には「二人で作戦に取り掛かります」という説明が付いていた。

 検察出身の法曹界関係者はC氏を「詐欺師程度の人物」と酷評する。ある関係者は「ソウル南部地検で証券犯罪を捜査する際、C氏を情報源として数回呼び出したようだ。株式関連のチャットだけを見て、これは株価操作が確実だなどと勝手な絵を描いていた詐欺師ぐらいに思っている」と話した。法曹界からは「与党につながるC氏が『尹錫悦』関連疑惑をたきつけるため、イ・チョル元代表に意図的に接近し、その代理人として活動したのではないか」とする見方も聞かれる。C氏は本紙の取材に応じなかった。

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