中学3年の娘のオンライン授業の開講初日だった今月9日、チェさん(44)は午後4時まで国語、数学、地理などの録画映像で進められた全ての授業を娘と一緒に視聴した。チェさんは「こうして自宅で学校の授業を視聴するということは一昔前までは考えることすらできなかった」とし「今日の先生たちの授業にはおおむね満足している」と話した。

 コロナウイルスの拡散で全国の小中高校がオンライン遠隔授業を始めることになり、教室での授業がインターネットを通じて学校外に公開されることになった。教育界では「教師の授業が公開されることで、父兄らが評価を下すことができるようになった。公教育の素顔があからさまになるわけだが、どんな評価が下されるかは未知数」との話が出回っている。

■授業公開をためらう教師、評価したがる父兄

 ソウル市江北区のある小学校は10日、保護者らに「全ての授業を課題中心に進めることにした」と公示した。教師と生徒が画面で向き合うリアルタイムの双方向授業はもちろんのこと、教師が事前に録画した映像を表示する方式も採用しないことにした。

 これに代わり、オンラインで開設したクラスに教師が課題を出すと、生徒が問題を解いて写真で撮って送信するという。同校のある保護者は「遠隔授業という手もあるのに、これでは誠意が感じられない」と話す。ソウル市陽川区のある高校も、全ての授業をEBS教育テレビの視聴と課題提出を中心に行うことにした。

 このように、教師らがリアルタイムの講義や自分の講義をあらかじめ録画した授業の公開に二の足を踏んでいる理由は、父兄らに視聴されるという負担のためだ。済州道のある中学校の授業映像は、教師の顔が分からないように撮影された。教師が講義する音声は流れるものの、画面には授業で使用する資料と教師の手だけが映し出される。同校のある教師は「自分の授業が公開されることで録画され、保存されることに相当な負担を感じているため」という。

 京畿道のある高校教師は「毎日公開授業をするのと同じ」とし「私の授業がやり玉に挙げられる日が来るのではないか」と気が気でない日々を送っているという。

 一方、父兄らの間では、授業公開が積極的に行われるべきだという意見が出ている。小学校4年の子どもを持つキムさん(40)は「EBS教育テレビの視聴で授業が進められるなら、学校はいらないのではないか」とし「教師も積極的に授業を公開し、親から評価を受けなければならない」と指摘する。これに対し、釜山のある高校教師は「授業の自主性が侵害される恐れが高い」と慎重な姿勢だ。

■「どちらにせよ学校外教育の質には追い付けない」…公教育崩壊の恐れも

 一部の教師は「遠隔授業が教師の役割を講義能力だけに縮小して評価する材料となっている」と不満をぶつける。生徒たちの心の成長に関心を抱き、学習意欲を向上させるなどの多角的な役割が無視され、授業進行能力のみに焦点が当てられ比較されるのが問題だ、というのだ。ソウル市江南区のある高校教師は「生徒とコミュニケーションを取りながら教育を行うのが教師の役割だが、遠隔授業では講義の実力が明らかになるだけ」と話す。光州市の中学校教師は「同僚が『いくら努力してもEBSや学校外教育を専門とする企業にはかなわない』として事実上諦め状態」という。ソウル市九老区のある中学校教師も「EBSとは差別化された講義映像を撮るには膨大な時間と努力が必要だ」とし「遠隔授業で公教育は学校外教育には付いていけない」という。多くの教師が今はいったんEBSテレビを視聴することで授業の代わりとし、コロナウイルスが沈静化することでいち早く登校、授業が直接行われる日を心待ちにしているというのだ。

 教育界では、学校の授業に失望した父兄が子どもを塾に通わせ、学校外教育の市場がさらに拡大するのではないかと懸念する。中学3年の子どもを持つキムさん(44)は「息子の学校の遠隔授業を一緒に聞いているが、授業内容が改善されなければ塾に通わせるつもりだ」と話す。

 中央大学のイ・ソンホ教授は「遠隔授業を通じて講義の質と透明性を高めることができるという点で公教育にはプラスとなるが、教師が授業公開をためらい、課題だけを提出するようになればマイナスとなる恐れもある」とした上で「公教育が信頼を失い、崩壊の危機に追い込まれないよう教師たちが積極的に取り組む必要性がある」と述べた。

郭守根(クァク・スグン)記者

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