フランスのエマニュエル・マクロン大統領は先日、国連安全保障理事会5常任理事国首脳とのテレビ会談を推進した。米国が新型コロナウイルス感染拡大防止の国際同盟構成に消極的なことから、自ら立ち上がったものだ。

 フランスの要求は「新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)期間だけでも国連安保理が監視している紛争地域における戦闘を停止しよう」という決議案を処理しようというものだった。ところが、この決議案は話し合いすらされなかった。米国が「決議文に『武漢ウイルス』という表現を入れなければならない」と主張して議論が膠着(こうちゃく)状態に陥り、ボリス・ジョンソン英首相も新型コロナウイルス感染症にかかって入院したためだ。

 米国の外交政策専門誌フォーリン・ポリシーは8日(現地時間)、「国連などの国際機関は新型コロナウイルス問題で何の役割も果たせていない」と批判し、このような事例を紹介した。これは、ドナルド・トランプ米大統領が「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)を掲げて大統領に当選した後、気候変動に関するパリ協定を電撃脱退するなどして、既にある程度予想されていたことではある。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックをめぐる状況は、米国のリーダーシップが消え、全世界がリーダーシップ真空状態に陥ったことを劇的に示していると言われている。国際的非政府組織(NGO)である国際危機グループのリチャード・ゴーワン国連局長は同誌に「今回の危機は、米国も中国も国連体制を率いる準備ができていなかったことを示している」「米国は新型コロナウイルス感染拡大の責任を中国に押し付ける偏狭さを見せたし、中国は危機に対処するビジョンを示せなかった」と述べた。

 事実、安保理が先日、国連事務総長の主導で新型コロナウイルスに関する非公開ブリーフィングを開こうとした試みは中国に阻止された。中国は自分たちの責任論が高まるのではないかと思い、新型コロナウイルスは全世界の平和と安保にとって脅威にならないと主張した。大国間の動きが行き詰まると、バルト海の小国で安保理非常任理事国のエストニアが「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは国際平和と安保にとっての脅威」という声明を発表した。「国連安保理は会議をインターネットで開くかどうかをめぐっても結論を出せないほど無気力な姿勢を見せた」と英紙フィナンシャル・タイムズは伝えた。ロシアが「会議の会場で会おう」と固執したことでもめたものだ。

 このような国連の姿は、過去の大規模な病気発生時とはかなり違う。2014年のエボラ出血熱によりアフリカで1万人以上が死亡した時、オバマ米大統領は国連安保理を通じて国連平和維持軍や米軍がエボラ出血熱を遮断するため活動できるようにした。その後、全世界から医師や研究者たちが西アフリカに派遣され、エボラ退治に乗り出した。2000年にエイズがアフリカで広がると、安保理はエイズを「安保の脅威」と規定、平和維持軍を通じコンドームを配布するなど、共同対処に乗り出した。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大で、国際的リーダーシップの真空状態は世界保健機関(WHO)を右往左往させる一因となった。国際機関に対する米国の関心が減って、そのすき間に入り込んだのが中国だ。テドロス・アダノム・ゲブレイェススWHO事務局長は2017年に中国の支援を受けて選出された。

 中国は新型コロナウイルス感染症発生初期、WHOを利用して新型コロナウイルスの危険性を過小評価させた。WHOはしっかりとした検証もなしに「人と人の間では感染がない」という中国政府の虚偽の主張を繰り返し、決定的な予防時期を逃させた、と米時事誌アトランティックは伝えている。

 トランプ大統領もWHOを政治的に利用した。トランプ大統領は14日、WHOに対して「中国偏向」「情報隠ぺい」を理由に資金援助を中止すると発表した。トランプ大統領の資金援助中止は米国国内における新型コロナウイルス感染拡大の責任をWHOに転嫁する面が大きい。

 このような大国間の政治ゲームで最終的に被害を受けるのは、WHOに医療支援を依存している貧しい国々の国民だ、とアトランティックは報道している。現実的に見て、WHOは貧しい国々に医療支援を行えるインフラを備えた唯一の組織だからだ。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ソマリアなどアフリカの10カ国は人工呼吸器が1台もないほど医療事情が劣悪だという。南スーダンには副大統領が5人いるが、人工呼吸器は4台しかない。いくら中国とWHOが憎いとしても、米国が支援を断てば、結局は力のない発展途上国の国民だけが死んでいくということだ。

 米外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長は先日、外交・国際政治専門誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿文で、「今回の新型コロナウイルス危機は転換点ではなく、(既存の流れを)加速させるだろう」「米国の指導力は衰え、国際的な協力はさらに難しくなるだろう」と述べた。また、「(国際社会は)無政府的な社会になり、世界はさらに混乱すると見られる」と予測した。

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