韓国政府は6日、統一部(省に相当)の李仁栄(イ・インヨン)長官主催で第316回南北交流協力推進協議会を開催し、北朝鮮に1000万ドル(約11億円)規模の大規模支援と、今後3年でおよそ200億ウォン(約18億円)を投入するDMZ(非武装地帯)平和統一文化空間造成事業について審議し、議決した。北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所と開城工業団地総合支援センターを爆破してからまだ2カ月も過ぎていないにもかかわらず、今のこの時点から韓国政府として北朝鮮への大規模支援を決めたことについては「不適切な決定」との指摘が相次いでいる。爆破された南北共同連絡事務所には、南北交流協力基金から総額でおよそ700億ウォン(約62億円)が投入された。

 1000万ドル規模の北朝鮮向け人道支援事業は、北朝鮮の九つの道と60の郡を対象に、世界食糧計画(WFP)を通じて乳幼児や妊婦などに栄養補助食品9000トンを提供するというもの。これには災難や災害防止のための労働に参加した北朝鮮住民にトウモロコシ、大豆、食料油など3600トンを提供する内容も含まれている。韓国政府は今年6月からこの事業を進めようとしていたが、北朝鮮による開城共同連絡事務所の爆破などで南北関係が悪化したため保留となっていた。李仁栄長官就任後では最初の対北支援の決定になる。統一部は今回の支援事業について「WFPからの度重なる要請によるもの」と説明した。

 この日の南北交流協力推進協議会では、DMZ平和統一文化空間造成事業に今後3年間で総額198億5200万ウォン(約17億6800万円)を支援する案件も議決された。DMZ平和統一文化空間造成事業は、南北出入事務所と撤去監視哨所(GP)などを活用して南北が共同で使用できる文化交流空間を造成するという事業だ。今年は28億9200万ウォン(約2億5760万円)が支援されることになり、来年は32億7000万ウォン(約2億9100万円)、2022年には137億ウォン(約12億2000万円)が必要と予想されている。

 この事業を巡っては「韓国国民の税金によって建設された連絡事務所を爆破したことへの謝罪が北朝鮮から一言もなく、対話にも出てこない状況で、一方的に北朝鮮への支援を急ぐことが妥当なのか」といった指摘も出ている。高麗大学の南成旭(ナム・ソンウク)教授は「李仁栄長官は今回、就任と同時に速戦即決で対北支援を押しきっている」「前任の長官たちが実行できず、深く考えた理由があったはずだが、このままスピード違反を続けることで対北制裁違反などの問題が発生し、韓米間に不協和音が出てくる恐れもある」と疑問を呈した。

 韓東大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「DMZは今年5月、北朝鮮軍によるGP銃撃が発生したデリケートな地域であり、国民の身辺の安全に対する懸念も大きい」とした上で「北朝鮮がすでに9・19南北軍事合意を破棄し、金与正(キム・ヨジョン)氏が6月に対南事業を『対敵事業』と公式に宣言した厳しい状況で、北朝鮮との合意もないまま一方的にDMZに新たな施設を造成するのは不適切だ」と指摘した。

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