▲経済部=チェ・ギュミン次長

 この22年間で最悪だという経済の成績表について、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「奇跡のような善戦の結果」と言った。この政府の我田引水、自画自賛、ネロナムブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫)を聞くのは一度や二度ではないが、-3.3%という成長率と過去最も高い失業率を前にしても「善戦」と言うとは驚きだ。

 新型コロナウイルスで数カ月間経済がストップしている欧米よりもましだと言って「精神勝利(自己正当化)」する前に、韓国からそれほど離れていない台湾にしばし目を向けてみることをお勧めしたい。韓国と台湾は経済構造の面で双子のように似ている国だ。両国とも製造業が強く、輸出で生計を立てていて、中国に対する輸出依存度が高い。主要輸出品目も半導体・電子製品・精油化学などと重なっている。1990年代後半にアジア通貨危機に見舞われた後、両国の財政当局はドル備蓄や財政健全性に死活をかけたという点も似ている。6月末現在の外貨準備高は韓国が世界9位、台湾が同6位。国家債務比率は韓国38.1%、台湾32.8%だ。

 諸条件は似ているが、最近の経済成績表はかなり差がある。韓国は4-6月期の国内総生産(GDP)が前年同期比2.9%も減少したが、台湾は下落幅が0.7%にとどまった。米国の格付け会社ムーディーズは今年の韓国の成長率を-0.5%、来年を2.8%と予想している。台湾は今年0.2%、来年3.7%だ。それぞれの国を代表する企業であり、世界の半導体市場のライバルであるサムスン電子とTSMCは両国が直面している状況を象徴的に現している。パンデミック(感染症大流行)のさなかでサムスン電子もそれなりに善戦しているが、TSMCは今年に入って大躍進し、時価総額の面で18年ぶりにサムスン電子を追い越した。1年前は想像だにできなかったことだ。

 新型コロナウイルス以降に備える両国政府の姿勢はさらに対照的だ。韓国は新型コロナウイルスを大義名分に「今は戦時の状況だ」と湯水のように金を使い、「他国は我が国よりも借金がはるかに多い」と詭弁(きべん)を並べ立てている。巨大与党を前面に押し出した財政暴走のため、韓国は今年GDP比-5.8%と過去最大級の財政赤字が予告されている。台湾は与野党関係が韓国と同じくらい良くないが、財政に関しては「景気を浮揚しても国家債務が過度に増加することは防がなければならない」という点で一致している。その結果、雇用保護や危機産業支援に少なからぬ補正予算を組みながらも、財政赤字は-2.1%と最小限に抑えた。

 経済だけでなく防疫でも、韓国政府はこの6カ月間ずっと自画自賛を続けた。全世界が韓国に賛辞を送っていると言って「K(韓国式)防疫」という新語まで作った。韓国と台湾は新型コロナウイルスの発生源である中国に近く、事実上の島であるという点で防疫条件も似ている。これまで韓国は感染者1万4305人・死者301人、台湾は感染者467人・死者7人だ。今年2月に新型コロナウイルスによる初の死者が出た時、我が国の大統領はチャパグリ(米アカデミー賞を受賞した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』に出てくるインスタントめん)を食べてご機嫌だった。ほぼ同じ時期に初の死者が出た時、台湾衛生福利部部長は涙を流しながら徹底的な防疫を約束した。「T(台湾式)防疫」のような「クッポン(盲目的愛国主義)」もなかった。こうした差が1万4305人対467人という結果を生んだのだ。

 1980-90年代の高度成長期に、韓国と台湾はシンガポール・香港と共に「アジアの四小竜」と言われた。このころ韓国と台湾は経済力がほぼ同じだったが、アジア通貨危機以降は韓国が急速に再飛躍した一方で台湾は停滞し、格差が広がり始めた。そうして20年経つにつれ、韓国は次第にかつてのライバルだった台湾に大きな関心を払わなくなり、台湾はそうした韓国を嫉妬(しっと)のまなざしで見るようになった。だが、新型コロナウイルス危機に対応する両国政府の実力差を見ると、サムスン電子とTSMCがそうであるように、そう遠くない時期に両国の立場が逆転するかもしれないという憂うつな予感がしてきた。

経済部=チェ・ギュミン次長

◆韓国の家計債務比率が対GDP比97.9%で世界1位、日本は?

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