米朝の緊張状態が高まった2017年、米国は北朝鮮の政権交代を念頭に置いた「作戦計画5027」について検討したが、この計画には核兵器80発を使用する可能性が含まれていたことが分かった。南北の全面戦に備えた韓米連合司令部の計画「作計5027」に核兵器80発の使用が含まれていることは今回初めて明らかになった。

 米国は2017年7月、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した直後、北朝鮮に警告を行うため、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が視察していた発射場を攻撃するためにそこまでの距離を正確に計算し、この距離と同じだけ離れた東海に戦略ミサイルを落としたという。これらの内容は「ウォーターゲート事件」の特ダネ記者、ボブ・ウッドワード氏がトランプ大統領に18回インタビューを行った内容に基づいて執筆された新刊『RAGE(怒り)』に記載されている。同書は15日(現地時間)に発行予定だ。

 13日に本誌が入手したこの本の内容によると、ウッドワード氏は「(2017年当時)ジェームズ・マティス国防長官は、トランプ大統領が北朝鮮に先制攻撃を行うとは考えていなかったが、その戦争のための計画は準備されていた」と伝えている。当時、米ネブラスカ州オマハにある米戦略司令部は、北朝鮮の政権交代を目指す作戦計画5027を慎重に検討し研究していたが、これには(北朝鮮による)攻撃に対する米国の対応策として、80発の核兵器を使用する方策も含まれていたというのだ。ウッドワード氏は「(北朝鮮)指導部を攻撃する作戦計画5015もアップデートされていた」とも伝えた。

 2017年、当時のマティス国防長官は米軍と国家安保チームがセキュリティー通信ラインで行う緊急会議「最高位機密カンファレンス」を通じ、北朝鮮によるミサイル発射について6回ほどリアルタイムでモニターしたという。北朝鮮は移動と隠蔽(いんぺい)が可能な移動式発射車両に数十個の核兵器を保有しているが、トランプ大統領はマティス長官に対し、米国に向かってくるいかなる北朝鮮ミサイルも迎撃する権限を与えたとウッドワード氏は伝えた。四つ星将軍出身のマティス氏は、トランプ政権の初代国防長官だった。

 2017年7月4日、北朝鮮は金正恩氏が直接見守る中、平安北道亀城の芳ヒョン飛行場周辺から米本土への攻撃が可能なICBM「火星14型」を初めて発射した。これを受けビンセント・ブルックス韓米連合司令官(当時)はマティス長官の承認の下、翌日直ちに南北の境界に近い東海岸で示威と警告目的の作戦に乗り出した。海岸から火を噴いて発射した米軍の戦術ミサイルは、186マイル(約299キロ)先の東海上に落下した。ウッドワード氏は同書の中で「それは米国がミサイルを発射した地点から北朝鮮のミサイル発射場、金正恩氏がミサイル発射を見守る写真が撮影されたテントまでの正確な距離だった」と説明した。当時、米第8軍が東海に向けATACMSミサイルを発射した事実は知られていたが、金正恩氏を攻撃するための距離を計算して発射されたことは今回初めて伝えられた。

 ウッドワード氏は「その意味ははっきりしている。金正恩氏は自らの個人的な安全を懸念する必要があった」と書いた。また米軍のミサイルが非常に簡単に発射場と金正恩氏を狙えるという事実について、これを北朝鮮が悟ったことを示す情報が収集されていないこともウッドワード氏は伝えている。米軍がATACMSミサイルを発射する方向を北西に変えるだけで、金正恩氏に命中させられるという事実を北朝鮮は理解できていなかったということだ。

 また2017年8月29日、北朝鮮が発射したミサイルは日本の北海道上空を越えて太平洋に落下した。当時のマティス長官は北朝鮮に確実なメッセージを伝えるため、北朝鮮の港を実際に爆撃すべきか悩んだが、全面戦争を懸念して取りやめたという。17年9月4日、北朝鮮は6回目の核実験を行った。米国は9月23日、戦略爆撃機B1Bや戦闘機F15Cなど20機以上を東海の北方限界線(NLL)を越えて飛ばす武力示威を行った。このような中、トランプ大統領の衝動的な命令でマティス長官がさらに頭を痛めたこともウッドワード氏は伝えている。マティス長官は私的な席で「私はトランプ大統領が何を言ってもわれ関せずだった」「たまに行われるツイートを除けば、通常はいかなる指揮も受けなかった」と述べたという。

 トランプ大統領はウッドワード氏とのインタビューで、「北朝鮮と本当に戦争直前まで行ったと聞いているが」との質問に「その通りだ。みんなが知っているよりもはるかに近づいていた。本当に近かった」と話したという。ウッドワード氏が「北朝鮮がICBMを発射すればどうなっていたか」と尋ねると、トランプ大統領は「彼(金正恩氏)にはあまりにも大きな問題が生じると言っておく。誰も以前に経験したことのない大きくて大きな問題だ」と答えた。金正恩氏も2018年4月、当時米中央情報局(CIA)局長だったポンペオ国務長官が訪朝した際「われわれは本当に(戦争に)近づいていた」と語ったことをウッドワード氏は伝えている。

 一方でポンペオ国務長官は北朝鮮との複数回にわたる会談後「在韓米軍は中国に対する制約になるため、金正恩氏は引き続き駐屯することを望んでいる」との結論を下したとウッドワード氏は指摘した。米朝による複数回の会談や軍幹部ら同士の書簡において、金正恩氏は韓国に米軍が駐留することについては直接にも間接にも、また一度たりとも問題視していないというのだ。ウッドワード氏は「それはその地に米軍を置くべきもう一つの理由だった」と説明した。ウッドワード氏は金与正(キム・ヨジョン)氏が金正恩氏を「偉大な指導者」「最高指導者」と呼ぶ一方で、一回も「お兄さん」と呼んでいないことも伝えている。

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