▲ソウル市鍾路区の青瓦台噴水台前で21日午前、江原道鉄原郡二吉里の住民が「家の中に地雷爆弾」と書かれたプラカードを持ち、集団移住対策の整備を訴えるデモを行っているところ。/写真=聯合ニュース

 「水害が起きて、首相や大統領夫人がやって来て慰労し、写真を撮ったのに何の対策もない。住民の苦痛を見ても目を背けているのか」

 21日午前、ソウルの青瓦台(韓国大統領府)噴水台前で60・70代の住民およそ30人が集会開催に乗り出した。江原道鉄原郡東松邑二吉里の住民らだ。67世帯、139人が暮らす二吉里は、先月初めに鉄原に降った700ミリの豪雨で漢灘江が氾濫し、集落全域が水に浸かった。川の土手を越えた泥水は、農地や道路はもちろん家の中にまで流れ込んだ。住民139人は慌てて避難したが、洪水に襲われた集落は見るも無残だった。食器類など屋内の家財道具は街頭にぶちまけられ、土砂が家の中をぎっしりと埋めた。さらにひどいことに、水に流された地雷が広場で数十個も見つかった。

 二吉里の住民らが青瓦台に移住対策を訴え出たのは、この集落が1979年、北朝鮮に対応すべきだとして韓国政府主導で形成された宣伝村だからだ。北朝鮮の五聖山からよく見えるようにという理由で、集落は低地に構えることになった。水害の危険にさらされるほかなかった。村ができたときに移住してきた住民のキム・ジョンラクさん(78)は21日、本紙の電話インタビューで「1979年に村が造成されるときも、住民らは『水害の危険が大きいので対策が必要』と言った」とし「それでも、北朝鮮に対抗するため是非ともこの地に村を造成しなければならないと政府から圧力をかけられ、住民らは受け入れるしかなかった」と語った。キムさんは「住民らは、村の面倒を見てやるという政府の言葉を信じて土地の費用や建築の費用を全て支払った。結局、政府が国民を食い物にして知らんふりをしている状況」と主張した。

 1996年に続き99年、そして今年と大きな浸水被害に遭った住民のチュ・ジョンヒさん(74)は「二吉里の住民は40年の苦痛を、ひたすら国のためのことと考えて耐えてきた」とし「しかし国は私たちを、必要とするときに使い捨てする道具としか思っていないらしい」とと語った。チュさんは「首相や大統領夫人、どちらも浸水で大変な思いをしている住民の日常をリアルに見ておきながら、こうして目を背けていることに驚いた」「一体誰のための政府なのか分からない」と批判した。

 しかも、二吉里の浸水被害は今回が初めてではない。96年と99年にも、氾濫した漢灘江の水が集落を襲い、住民らはなんとか命だけは助かった。住民らはこの日、集会で「25年間、大雨が降りさえすれば洪水の被害。これ以上我慢できない」として、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に集団移住対策の整備を訴えた。また、声明を通して「今夏の梅雨で村全体が水に浸かり、水害復旧をするためつらい日々を過ごしている」としつつ「水害の翌日、村の広場で数発の地雷が発見されるなど、住民の安全は依然として大きな脅威を受けている状況」と伝えた。

 住民らは「敷地を用意して家を新たに建てるのに、少なくとも2億ウォン(約1800万円)近い費用がかかる」とし「村の住民の大多数は高齢で、追加の支援なしに集団移住は不可能。政府の支援が切に必要」と主張した。二吉里のキム・ジョンヨン里長(54)は「村の外で黄色く実ったイネは、地雷の危険があるので収穫しようという気も起きない」とし「対北宣伝に人生を利用された住民のため、体系的な移住対策が必要」と語った。

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