▲ウェブトゥーン作家のチュ・ホミン氏と天安爆沈を戯画化したイラスト

 有名ウェブトゥーン(ウェブ上で配信される漫画)作家のチュ・ホミン氏が、かつて北朝鮮による哨戒艦「天安」爆沈を否定するイラストを描いたことについて、9年過ぎた今になって謝罪した。先日ユーチューブにアップした「謝罪の言葉」の中でチュ氏は「当時広まっていた人間魚雷説を描いたが、結果的に(天安爆沈は)確かに北朝鮮がやった。私が完全に間違っていた」との考えを示した。「大きな謝罪以外に言うべきことがない」ともコメントした。2011年に北朝鮮の魚雷を人間が操縦するイラストに「1番」と書き込み、これを人魚と共に描きながら「ファンタジー(幻想)」と書き込んだことについても「申し訳ない」と謝罪した。中央選挙管理委員会委員のチョ・ソンデ候補者も22日の人事聴聞会で、かつて「天安爆沈は北朝鮮の犯行」とする政府の発表に対し「驚くべきほどのギャグ」と主張したことについて、10年ぶりに「謝罪する」と述べた。いかなる背景があったとしても、天安を巡るデマや侮辱の流布に対する謝罪が出たのは幸いなことだ。

 2010年に韓国政府はオーストラリア、スウェーデンなど5カ国による合同調査と最先端の科学的な技法を動員し、北朝鮮が爆沈の主犯であることを解明した。北朝鮮軍固有の表記方式通り「1番」と記載された潜水艇魚雷推進体などの物証も確保した。軍事的な専門知識のない一般人が戯画化した「人間魚雷」は、1940年代に日本軍が「回天」という名称で実際に製造した兵器だ。魚雷に一人の人間が乗り、これを操縦して敵艦に自爆攻撃を行うものだ。日本はこれを数百台製造した。

 この「人間魚雷」を北朝鮮が保有しているとする脱北民の証言もあった。しかし与党・共に民主党支持者の多くは「小説」と主張した。天安爆沈について彼らは「座礁したのだろう」「韓米訓練との関連はないのか」「真実の隠蔽(いんぺい)」「北風を起こそうとしている」などのデマを広めた。国内政治に気を取られるあまり、ファクトから顔を背けたのだ。国会での北朝鮮糾弾決議案の採決では、民主党議員70人中69人が反対票を投じた。ある左派知識人が国際調査団による調査結果に反論するとして、物理と化学の勉強を始めたという笑えない話もあった。彼らの中で「あのときは私が行き過ぎていた」と反省した人間は一人もいなかった。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が天安爆沈について「北朝鮮の犯行」と言及したのは、事件発生から5年後のことだった。ところが今年3月に初めて出席した「西海守護の日」の記念の辞では、十数分にわたる演説で「北朝鮮」という言葉は1回も使わなかった。天安戦死者の母親が文大統領に走り寄り「大統領様、これが誰の犯行なのか話してください」と訴えると、聞こえるか聞こえないかのような小さい声で「北朝鮮の犯行とする政府の立場がある」と述べた。

 「ファクト」は左右や与野党の問題ではない。ここでは事実でも、あちらでは事実でないとなれば、社会も国も維持されない。近頃、韓国社会では事実をごり押しや詭弁(きべん)によって握りつぶし、対立する国民が自分たちに都合の良い話に付和雷同する現象が徐々にひどくなっている。「米国の牛肉を口にすると脳に穴が開く」「韓米自由貿易協定(FTA)を締結すれば米国の属国になる」「セウォル号は米国の潜水艦と衝突した」「米国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)の電磁波で人間が揚げ物になってしまう」など、これらを主張した人間たちの中から「あのときは私が間違っていた」と認めるケースが今後も出てこなければならない。それこそがまさに進歩だ。

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