▲8日夜11時7分ごろ、蔚山市南区にある商業施設の入ったタワーマンションで発生した火災で、最上階・33階の入居者3人を背負って救助した4人の救助隊員たち。写真=蔚山消防本部

 「ああ、このまま死ぬのかな。誰も助けに来ないのかな」

 9日午前0時20分ごろ、蔚山市南区にある商業施設の入った超高層マンション「サムファン・アールヌーボー」最上階である33階の住民イさん(20)は、窓の外に顔を出して救助を待っていた。消防に通報してからもう1時間たっていた。そばには母親と叔母が一緒に窓につかまって息をしていた。8日夜11時過ぎに発生した火災で、勢いの強い炎と煙に建物が飲み込まれ、玄関ドアからの脱出は不可能になっていた。部屋の中にも煙と焦げたにおいが充満していた。3人は徐々に力がなくなっていった。イさんは「最初は『あと少しで誰かが助けに来てくれるだろう」と思っていたが、だんだん時がたつにつれて絶望的になった。これ以上もたないと思い、いっそのこと飛び降りた方がましだとさえ思った」と話す。

 長い恐怖の時間が続き、意識が混濁してきた時、誰かが玄関ドアを壊して家の中に入ってくる音が聞こえた。イさんは「気を失いそうになった瞬間、誰かが私をつかんだ。『ヘルメットをかぶった神たちなのか』と思ったところで意識を失った」と語った。イさんが気が付くと、1階に降りていた。イさんが見た「ヘルメットをかぶった神たち」はイさんと母親、叔母をおぶって33階から1階まで降りてきたのだ。

 「ヘルメットをかぶった神たち」は蔚山南部消防署の救助隊員たちだった。救助隊長のイ・ジョンジェ消防警、チーム長のユン・ハンヒ消防尉、キム・ホシク消防校、チョ・ジェミン消防士(氏名の後ろは階級名)だ。4人は当初、同マンションの避難所が設けられていた28階で、先に避難していた住民たちの救助に当たっていた。その住民たちの一部が「33階にもまだ人がいる」と伝えたのだ。

 4人はすぐに33階まで駆け上がったという。キム・ホシク消防校は同日、本紙のインタビューで、「イさん宅に入ると、既にリビングは焼け落ちている状態で、煙も立ち込めていた。部屋の中に人がいないか調べようとドアを開けたら3人の女性がかろうじて息をしている状態で窓際にいた」と語った。

 消防隊員はすぐに3人に呼吸補助器をかぶせた。3人は既に煙をたくさん吸い込み、自分で歩けない状態だった。隊員たちは1人ずつおぶって非常階段を33階から1階まで降りていった。

 キム・ホシク消防校は「重い装備を着用した状態で、大人の女性をおぶって降りるのは容易ではなかった」と言いながらも、「救助隊の全員が緊迫した状況で、1人でも多く、少しでも早く助けなければならないという思いから、超人的な力が出たようだ」と語った。

 イさんは「おぶられて階段を下りていた時、かすかに意識が戻ったが、私をおぶっていた消防隊員は『大丈夫だ。心配しないで』と言ってくれた。その言葉を聞いて『助かった』と感じ、涙が出るほどありがたいと思った」と言った。キム・ホシク消防校は「当然のことをしてお礼を言われるなんて、かえって私の方がありがたい」と述べた。

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