韓国政府が経済協力開発機構(OECD)の統計を「選択的」に利用し、韓国の財政健全性を過度に肯定的に提示してきたとする指摘が2日、国会予算決算特別委員会の報告書に盛り込まれた。報告書は韓国政府が今年5月、国会に提出した「長期財政見通し」で将来の歳出増の推計方式を突然楽観的な方向に変えた点も指摘した。政府は現在の拡張財政を正当化するため、統計を取捨選択し、将来の政府による支出増を控えめに見込んでいる。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年に406兆6000億ウォン(約37兆6000億円)だった歳出を今年は554兆7000億ウォンに増やした。来年には555兆8000億ウォンの歳出を見込んでいる。

 政府と与党共に民主党は今年の韓国の政府債務が対国内総生産(GDP)比で43.7%にすぎないとし、まだ「使えるカネ」が十分にあると主張している。その際に引用した統計が「OECD加盟国の政府債務の対GDP比平均」だ。OECD加盟36カ国の政府債務比率を平均すると100%を超えるのに対し、韓国はその半分にも満たない40%台前半から半ばなので、財政健全性には問題がないとの論法だ。

 しかし、予算決算特別委員会の首席専門委員が同日示した報告書は、政府が「OECD加盟国の政府債務比率平均」を選択的に引用してきたと指摘した。報告書によると、平均を計算する方式には各加盟国の政府債務比率を全て足した後、加盟国の数で割る「単純平均」方式と各加盟国の政府債務を足し上げた後、加盟国全体のGDPで割る「加重平均」方式がある。政府は加重平均のみを引用してきたというのが報告書の指摘だ。

 加重平均方式で計算した場合、経済規模(GDP)が大きい米国、日本などの政府債務比率が大きく反映される。その結果、18年時点のOECD加盟国の政府債務比率は単純平均で79.3%だが、加重平均ではそれを30ポイント上回る108.4%という数字が出る。

 米国、日本、欧州連合(EU)の主要国は基軸通貨国なので、極端に言えば、自国通貨を刷って借金を返すことができる。しかし、韓国はそれができない。報告書は「小国、開放経済、非基軸通貨国、高い輸出依存度など韓国の特性を考慮すると、米国、日本などのように経済規模が大きく、債務比率も高い国を加重した平均概念である『加重平均』で韓国の債務水準を比較することに実益があるかどうか論議が必要だ」とし、「『単純平均』が物差しとして適切だ」と指摘した。

 報告書によると、韓国政府は来年度予算案と共に提出した「第2次長期財政見通し」で今後政府が財政支出をどれだけ増やすか予想する方式も変更した。政府の歳出には健康保険、国民年金、報勲手当など法律に従い必ず支出しなければならない「義務支出」のほか、韓国版ニューディール予算のようにその時の政策によって政府が任意で支出する「裁量支出」がある。2015年に朴槿恵(パク・クンヘ)政権が発表した第1次長期財政見通しは今後の義務支出増とともに、裁量支出も毎年4%増えると仮定した。しかし、文在寅政権の第2次長期財政見通しは24年から60年まで義務支出と裁量支出を合わせた額が4%増えると仮定した。

 今後は人口の高齢化などで福祉支出が増え、義務支出が急速に増加すると予想される。このため、第2次長期財政見通しを守るためには、次期政権からは裁量支出を削減し続けなければならない。現政権は任意で政府財政を投入したが、次期政権からはそれを支えるために新たな政策は取らず、財布のひもを締めなければならない。

 与野党はそうした報告書に基づき、来年度予算案の審議を開始した。民主党の金太年(キム・テニョン)院内代表は「556兆ウォン規模の来年度予算案はコロナ危機克服と先導型経済に大転換を図るための必須財源だ」とし、「野党が予算審議を政争の手段としないことを望んでいる」と述べた。野党国民の力のペ・ジュンヨン院内広報は「現政権が終わり、残るのは負債だけだ。役に立たない事業と予算を必ず削減する」と述べた。

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