韓国が15日、中国が主導する世界最大の自由貿易協定(FTA)である「東アジア地域包括的経済連携(RCEP、アールセップ)」加入に署名した。韓中日や東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加し、全世界の人口および国内総生産(GDP)の30%を占める「メガFTA」に参加したのだ。RCEPは関税障壁を崩し、原産地基準も統合して、域内通商を活性化させることを目標としている。貿易で成り立っている韓国としては経済領土を広げる機会であると同時に、これまでにはなかった新たな挑戦でもある。

 時期は微妙だ。RCEPは初期にASEANが乗り出したが、今では中国が事実上、主導している。ところが、米大統領選で当選を確実にしたバイデン氏は「アジアやヨーロッパの友人たちと21世紀の貿易ルールを作って中国に対抗する」と公言した。事実、バイデン氏はオバマ大統領時代に副大統領として推進した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への復帰に積極的だ。オバマ前大統領は米日豪などが参加するTPPで地域経済と共同体をまとめ、中国をけん制しようとしたが、トランプ大統領は孤立主義を掲げて脱退した。同盟と多国間主義を強調するバイデン氏の通商政策とRCEPは衝突する可能性がある。

 しかし、RCEPとTPPは二者択一の問題ではない。両協定とも加入している国は日本・オーストラリア・ベトナム・シンガポールなど7カ国にも達する。青瓦台も「両協定は相互補完的な関係だ」と言っている。韓国は前政権でTPPに参加する機会を逃した。通商戦略の軸を多国間協定ではなく、二国間協定に置いた上、日本に対する市場開放を懸念する声と農業分野反発で顔色をうかがった。経済構造改革はもちろん、北東アジアの安保形勢図まで考慮する大きな戦略がなかった。その結果、貿易領土戦争で一歩出遅れた。今からでもTPP加入を準備しなければならない。

 米中対立が日増しに激化している状況で、「安保は米国、経済は中国」という図式は通用しない。現政権のほぼ体質化した「中国のご機嫌うかがい」のため、米国が率いる経済秩序への参加をためらってはならない。世界の最貧国だった大韓民国を世界10位圏の経済強国に躍進させたのは、不屈のチャレンジ精神だった。中国主導のRCEPも、米国主導のTPPも、我々は挑戦し、能動的に参加しなければならない。

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