2000年の時点で、オーストラリアの輸出額に占める中国の割合は5%ほどだった。ところが2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟した中国が「世界の工場」になったことで、オーストラリアの対中資源輸出が急増し始めた。中国のGDP(国内総生産)が年10%成長すると、石炭・鉄鉱石などが豊富なオーストラリア西部は14%も成長した。陸克文という中国名まで持つ親中派のラッド首相が07年に政権を獲得したことで、両国の経済関係は一段と深まった。中国資本や留学生、観光客が押し寄せると、オーストラリアは安定的な成長を享受した。その間、オーストラリアの輸出の対中依存度は40%近く跳ね上がった。

 2015年、中国人によるオーストラリアでの不動産投資額は240億豪ドル(約1兆8500億円)と、前年の2倍に増えた。米国の3.5倍だった。オーストラリアの主要都市の地価が暴騰し、オーストラリア国民が中国人の家を借りて暮らすという事態が広がった。中国は、オーストラリアの国富である主な資源開発会社ものみ込もうとした。17年には、中国の不動産業者の資金提供を受けたオーストラリアの政治家らが中国をかばっていたのが発覚した。17万人いる中国の留学生はオーストラリアの大学で、香港民主化を支持する学生らに暴力を振るった。オーストラリア国民は驚愕した。

 今年に入って中国発のコロナが流行すると、オーストラリアはウイルスの起源を調査すべきだと主張した。中国の香港・ウイグル弾圧を批判し、ファーウェイ(華為技術)の5G事業も不許可とした。そうして同盟国の米国が主導する地域安全保障協力体「クアッド」(米・日・印・豪)に参加した。すると中国は、韓国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)問題のときのように、オーストラリアの経済依存度を報復カードとして利用した。ほとんどが中国に輸出されているオーストラリア産オオムギには80%の関税をかけ、豚肉・石炭・木材などにもかせをはめた。さらには、オーストラリア産ワインまで輸入を断った。

 すると世界各地で「オーストラリア産ワインを飲む」キャンペーンが起こっている-と外信各社は伝えた。米国ホワイトハウスや19カ国の議員の集まりなどが賛同した。英国メディアはオーストラリア・ワインを、中国に立ち向かう「民主主義ワイン」と表現した。中国がノルウェーにサーモンで、日本にレアアースで、韓国に観光禁止などで報復したときには見られなかった光景だ。中国の暴力に対し、民主主義諸国が連帯し始めた。

 オーストラリアは今、過度の対中依存が災厄を呼んだと切に感じている。すぐには難しくとも、経済だけを見て中国に屈従しては、その影響圏から抜け出し難いと判断した。そこで同盟国と手を握り、外交の原則を守ろうとしているのだ。オーストラリアの首相は「カネのために主権や民主主義で妥協はしないだろう」と語った。人ごとではない。オーストラリア・ワインを1本買いたい。

アン・ヨンヒョン論説委員

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