北朝鮮住民のA氏が先月、韓国軍の最前方フェンスを乗り越える前、軍事境界線(MDL)以南の非武装地帯(DMZ)を21時間、およそ12キロ移動していたことが7日までに判明した。A氏が動いたルートには韓国軍のGP(監視哨所)が5カ所あった。だがA氏はこれらのGPを全て無事に通過し、韓国軍GOP(一般前哨)の鉄条網を乗り越えた。その後もさらに14時間半、9キロ入り込んだところで韓国軍に発見された。

 韓国軍の合同参謀本部(合参)戦備態勢検閲室が7日、保守系最大野党「国民の力」所属の尹柱卿(ユン・ジュギョン)議員に報告したA氏のフェンス越え事件の結果によると、A氏は江原道の最前方地域でMDLを渡り韓国軍の作戦地域に入り込んだ後、21時間にわたり韓国側の地域を12キロ歩き回っていた。韓国軍は11月2日午後10時20分ごろ、MDL付近で「未詳人物」のA氏を発見したが、追跡には失敗した。

 韓国軍がA氏を再び捕捉したのは、ほぼ1日の経過した11月3日午後7時25分だった。最初の識別地域とは12キロ離れた場所で、A氏がフェンスを越える様子が韓国軍の熱映像監視装置(TOD)に捉えられた。尹議員側は「GP5カ所を通り過ぎたのにA氏は発見されなかった」と指摘した。A氏は、フェンスを越えた場所からさらに9キロ南下した地点で、11月4日の午前9時56分ごろ発見された。A氏が最初に捕捉された後、韓国側が身柄を確保するまでに合計35時間36分、およそ21キロを思うがまま歩き回ったのだ。

 韓国軍では、A氏が韓国軍の集中監視・捜索区域を2泊3日にわたり何らの制止なく歩き回ったことについて「地形地物のせい」としている。韓国軍は先月、最前方地域のフェンスを報道陣に公開し「東部前線の場合、地形が峻嶮(しゅんけん)で警戒作戦に限界があることは避けられない」と説明した。戦備態勢検閲室は7日の尹議員室への報告で、A氏がフェンスを越えた後、GOP部隊の人員が出発したが、現場に到着するだけで30分かかったことを明らかにした。

 A氏のフェンス越え当時、韓国軍はTODでこれを見守っていたが、自動録画はされなかった。当時、GPが工事中という理由でTOD関連装備をGOPに移しており、一部のケーブルをきちんと連結していなかったからだ。韓国軍では、A氏のフェンス越えの後、現場で当時の状況を再現したが、このときもまた動作監視センサーは鳴らなかったと伝えられている。なおA氏は、2度試みた末にフェンス越えに成功したという。

 これに先立ち韓国軍は先月、「フェンス警戒システムの主要構成品の一つである『上端感知誘発機』のねじが外れており、警報音が鳴らなかったと推定される」と発表していた。尹議員は「韓国軍が毎回完璧だと大言壮語してきた科学化警戒システムが、たびたび突破されている」とし「現政権が語る『開かれた国防』とは、たびたび警戒が突破されることで『南北間の自由往来』とはこういう形態を言っているのではないかと疑念を抱く」と批判した。

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