コロナ対策が一番うまくいった国に数えられるシンガポールは、米製薬大手ファイザー、ドイツのバイオエンテックが共同開発したコロナワクチンの接種を間もなく開始する。20年12月初め、英国を皮切りに米国、カナダなどが接種を開始したワクチンだ。21日にはアジアで初めてファイザー・バイオエンテック製ワクチンがシンガポールに到着した。米モデルナ、中国の北京科興生物製品(シノバック・バイオテック)、米アークトゥルス・セラピューティクスのワクチンも相次いでシンガポールに供給される予定だ。

 人口570万人のシンガポールは20年4月に1日の新規確定患者数が最高(1111人)を記録後、比較的安定した形で感染規模をコントロールした。10月からは1日の感染者数が20人未満だ。26日現在でコロナによる死者数は韓国が808人、シンガポールが29人だ。シンガポールの人口が韓国の10分の1であることを考慮しても、韓国政府が誇る「K防疫」に肩を並べる防疫成果を上げている。

 ところが、ワクチンに関する両国の態度は異なった。シンガポールは確定患者数が1桁台に抑えられていた期間もワクチン確保に全力を挙げた。ワクチン購入に10億シンガポールドル(約780億円)の予算を割り当て、複数種のワクチンを先行購入した。第3相臨床試験の結果が公開されていない中国・シノバックのワクチンも最近確保したという。シンガポールのリー・シェンロン首相は12月14日、ファイザー製ワクチンの使用承認を発表する国民向け談話で、「多様なワクチンに賭けた」と述べた。安全性と効果が完全には確認されていない状況でもかかる費用を覚悟し、複数のワクチンを確保したのだ。リー首相は21年7-9月までに全国民への接種に十分な量を確保すると説明した。

 韓国は全国民がいつワクチンを接種できるか約束できずにいる。韓国政府は20年11月、英アストラゼネカのワクチン1000万人分の購入契約を結んだのに続き、12月24日にはファイザー(1000万人分)、ヤンセンファーマ(600万人分)との購入契約を完了した。アストラゼネカのワクチンは早ければ21年2月に接種が始まる。ヤンセンのワクチンは21年4-6月、ファイザーのワクチンは21年7-9月に一部が確保できる予定だという。1年後の21年末でもワクチン接種による集団免疫は期待できないかもしれないことを示している。

 なぜこうした差が生じたのか。K防疫に対する過信による慢心のせいだ。コロナ流行初期から医療界はワクチンの開発と確保を急ぐべきだと勧告していたが、政府はそれを無視した。「防疫一等国」だと自画自賛し、K防疫の宣伝には余念がなかった。中国は21年、ファイザー製ワクチン1億回分を購入する契約を最近結んだ。現在第3相臨床試験中の中国のワクチン候補5種を含め、21年には年間生産量が16億回分を超えると予想される状況で外国製ワクチンにまで手を伸ばした。

 韓国の丁世均(チョン・セギュン)首相は12月20日、「ワクチンタスクフォースを稼働した7月には国内の確定患者数が100人前後で、ワクチン依存度を高めることを考えなかった側面がある」と述べた。「なぜ韓国人はコロナワクチンの接種を受けられないのか」という批判が強まってようやく政府のワクチン確保遅延の責任を認めるような発言を行った。

 シンガポールのリー・シェンロン首相はワクチンが安全だと国民を安心させるため、自身からワクチン接種を受けると表明した。そして、「ワクチンのおかげでトンネルの出口の光が見えた」とも述べた。ワクチン接種でウイルスの拡散を防げば、経済回復を前倒しできる。世界の政治・経済リーダーがスイスのダボスに集まって開いていた世界経済フォーラムは今年、シンガポールで開かれる。シンガポールに対する外部の信頼と同国の自身感が端的に表れている。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領も12月9日、「コロナの長いトンネルの出口はもうすぐだ」と述べた。早く長いトンネルの出口の光を目にしたいものだ。

北京=キム・ナムヒ特派員

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