大統領直属の国家水管理委員会は18日、錦江の世宗堰(せき)と栄山江の竹山堰を解体し、錦江の公州堰は部分解体することを決めた。ただし水管理委員会は工事の開始時期については準備状況やさまざまな条件などを考慮し、地域住民などの意見を聞いた上で決めることにしたという。韓国政府は国家水管理委員会と流域ごとの水管理委員会を立ち上げ、せきの処理とその日程について協議を行ってきたが、結論は何度も先送りされた。環境部(省に相当)長官が2019年8月「せきの解体に必要な事前の計画まで全て取りまとめるには、最低でも4年はかかる」と発言し、これによって「政府はせきの解体を放棄した」との見方も広がった。「実際にせき解体計画を取りまとめるには、今後も2年はさらに必要」との見方もある。しかも「地域の条件などを考慮して時期を決める」とされたことから「現政権の任期中にせきを解体するのは難しくなった」との見方が大勢を占めている。

 巨額の税金を投入して建設されたせきを、再び税金を使って解体するという発想それ自体がまともではない。せき解体の大義名分は「自然性の回復」ということらしい。道路や港湾を建設し、川にダムや堤防を設置するのは、国土を強靱(きょうじん)化して国民の生活と財産を守るためだ。今問題となっているせきによっても莫大(ばくだい)な水資源が確保され、景観も良くなった。これは多くの国民が実感している。

 一方で道路や港湾、ダムを建設する過程で一部の生態に変化が生じるのは避けられないことだ。自然を取り戻すためにせきを解体する必要があるのなら、川の上流にあるダムも全て解体しなければならないが、そんなことがあってもよいだろうか。「朝鮮王朝時代に戻って当時の人と同じ生活をする」と言うのと同じ詭弁(きべん)だ。「太陽光によって国土が破壊されるのは問題ないが、せきによって緑藻が生じるのは容認できない」という主張も前後のつじつまが合わない。水管理委員会はせきの解体によって水質が改善されることを示す具体的なデータも提示できていない。逆に竹山堰の開放によって水質が悪化したとするモニタリングの結果もある。

 川の流れを大きくして生態系を取り戻すのであれば、せきの水門を開ければそれで十分だろう。あえてせきの解体を主張する理由は「前政権が手掛けた事業の破壊」にすぎない。政権発足直後にせき解体を進めたところ、地元住民と国民が強く反発した。しかし政権の側に立つ環境団体の顔色もうかがわねばならない。そのため環境団体と住民・国民の間で駆け引きをした結果、今回のように「せきは解体するが、その時期は分からない」という曖昧な結論が出たのだ。

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