「盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団」の柳時敏(ユ・シミン)理事長の発言は政界で「『サガジのない』『サガジ』(どちらも生意気で非常識なという意味)発言」の代名詞だった。2002年、全羅道のベテラン議員たちに「DJ(金大中〈キム・デジュン〉元大統領)の信任さえ受けていれば犬のクソであれ牛のクソであれ3選も4選もできるのに、何の勲章になるのか」と言った。2004年には「教会の多くは大衆を無知と心の迷いの中にくくりつけて麻酔するサービス業だ。イエス様がおいでになったら、すべてをぶち壊すだろう」と言った。また、「60代になると脳細胞が変化して全く別の人格になる」とも言った。「ハンナラ党撲滅の歴史的使命を帯びて生まれた」と言ったり、若者たちには「就職は各自の責任だ」と言ったりした。このため、「サガジなく言う才能を持って生まれた」と批判が殺到した。

 その柳時敏氏が2006年に保健福祉部長官に指名された時の人事聴聞会でひょう変した。端正なグレーのスーツに身を包み、七三分けで腰を低くし、頭を深く下げた。その3年前の登院時のTシャツにチノパンという反逆児の姿とは全く違っていた。礼儀正しく「尊敬する議員様」「いろいろと間違ったことをした。行き過ぎた表現をしたことについて謝罪する」と言った。

 柳時敏氏はさまざまな非難で世論がわくと謝罪でもみ消そうとすることが多かった。同じ与党議員たちが同氏の長官就任に集団反発すると「これまで間違ったことをしてきた」という謝罪の手紙を出した。自分が加害者だった「ソウル大生民間人暴行事件(別名:フラク活動家事件)」の被害者らが聴聞会の会場前まで迫ると、20年ぶりに謝罪した。キリスト教界の反発には「私の高慢と独善を後悔している」と言い、動画投稿・共有サイト「ユーチューブ」の自身の時事チャンネルで女性記者セクハラ(性的嫌がらせ)発言が出るや、いち早く謝罪して嫌疑なし処分となった。

 柳時敏氏は2013年の政界引退宣言後、テレビ番組に出演してイメージチェンジした。ところが、2018年に盧武鉉財団の理事長に就任すると、再び「サガジ柳時敏」に戻ってしまった。チョ国(チョ・グク)前法務部長官問題の時、ありとあらゆる詭弁(きべん)でチョ国一家を擁護した。同前長官の妻・鄭慶心(チョン・ギョンシム)東洋大学教授の証拠隠滅行為を「証拠保全」と擁護し、東洋大学総長には懐柔するような電話までした。これについては一度も謝罪していない。

 柳時敏氏は2019年12月、検察が盧武鉉財団と自身の口座をのぞき見たという疑惑を提起した。それから1年余りにわたって証明もできずに沈黙したままだったが、22日に突然謝罪文を出した。「相手を『悪魔化』した。敵意に駆られて論理的確証バイアスに陥った。検察関係者の方々に深く謝罪したい」と言った。今後は政治批評をやめるという。同氏は今、虚偽事実の適示による名誉毀損(きそん)で告発され、検察の捜査を受けている。突然の謝罪もこのためだろう。同氏は世論が不利になり、責任を取らなければならない状況になれば、謝罪し、頭を下げてきた。そうして時が経つと、以前の自分に戻った。今回もそうなるのかどうかは間もなく明らかになるだろう。

ペ・ソンギュ論説委員

ホーム TOP