米連邦捜査局(FBI)のエドガー・フーバー初代長官は要人たちの査察情報を武器に、1924年から米政界の裏の実力者のように振る舞った。ルーズベルト大統領がナチスドイツの浸透を防ぐため、FBIに盗聴を許可したことから、そうした査察が可能になった。彼はルーズベルト大統領に政治家の査察情報を提供して寵愛(ちょうあい)された。政治家や市民運動家に対する違法盗聴の事実が暴露されても、びくともしなかった。米国の要人たちに対するとてつもない数の盗聴・査察情報のおかげだった。彼は死ぬまで、なんと48年間もFBIトップの座にいた。

 韓国にも盗聴があった。金泳三(キム・ヨンサム)政権時は盗聴のため「美林チーム」を作り、首相・長官・青瓦台首席秘書官・与野党代表らを盗聴した。美林チーム長の自宅で押収された盗聴テープだけで274本もあった。これは「M報告」という名前で安全企画部(現:国家情報院)部長と次長に報告された。当時の美林チーム長は「朝、青瓦台に送る(盗聴)報告書を作ろうと、つめが黄ばみ、抜け落ちるほどの状況だった」と話す。

 金大中(キム・デジュン)政権は1999年、国家情報院・情報通信部・法務部合同で新聞広告を出した。「国民の皆さん、安心して電話をしてください! 携帯電話は盗聴できません」。当時の野党が携帯電話の盗聴に関して疑惑を強く提起すると、長官たちが集団で出てきて記者会見をした。ところが、2003年に国家情報院の携帯電話大量盗聴の事実が暴露され、真っ赤なウソだったことがばれた。その盗聴機器を廃棄するにはトラックを使わなければならないほどだった。

 当時の国家情報院は、元大統領から与野党の政治家・公職者・ジャーナリスト・経済関係者・市民団体・労働組合幹部まで約1800人を盗聴していた。主な電話局の中継通信網に盗聴装置をつなぎ、すべての通話を監視した。金大中政権の太陽政策を批判した黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記を頻繁に盗聴し、政界関係の私的な場での発言を問題視して脅した。この「通信情報」は毎日、四角形の袋に入って国家情報院長に報告された。この事件で、国家情報院の辛建(シン・ゴン)、林東源(イム・ドンウォン)元院長と金銀星(キム・ウンソン)元次長が逮捕され、有罪判決を言い渡された。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権では国家情報院が2007年、李明博(イ・ミョンバク)ハンナラ党大統領選候補の親族の不動産情報を閲覧した。査察だった。文在寅(ムン・ジェイン)政権では脱原発反対団体や発電会社「韓国水力原子力」の労働組合動向報告書を作成した。

 朴智元(パク・チウォン)現・国家情報院長が16日、国会で「金大中・盧武鉉政権時に違法査察はなかった」と言った。李明博政権時の国家情報院が国会議員らに関して作成した文書に比べると、金大中政権の盗聴ははるかに深刻な問題だ。それにもかかわらず、「査察はなかった」という。現政権の人々はウソを堂々と言う。しかし、いくら何でもこれは少々ひどすぎる。

ペ・ソンギュ論説委員

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