ロシア外務省は26日、平壌駐在のロシア外交官8人が前日家族たちと共に帰国したことを伝え、フェイスブックとインスタグラムにこれと関連する写真や動画を掲載した。写真にはウラジスラフ・ソロキン(Vladislav Sorokin)3等書記官とその家族6人が「レール・バイク」のように鉄道の線路上を移動する大型のトロッコを押しながら、北朝鮮との国境を越える様子が撮影されていた。大人3人がトロッコを押し、子供3人が数多くの旅行かばんと共に座っていた。

 ロシア外務省によると、一行は汽車で32時間、バスで2時間移動し国境近くにたどり着いたという。フェイスブックには「列車で32時間かかるとは理解できない」などのコメントもあった。北朝鮮の鉄道は老朽化が激しいため、時速40キロほどの「のろのろ運転」をしている上に、停電もたびたび発生する。平壌から清津までは28時間かかるという。

 羅先市に到着した一行がロシアに入るには線路上でトロッコを1キロほど押さねばならなかった。国境封鎖によって北朝鮮とロシアを結ぶ交通手段が全てストップしているからだ。豆満江の国境を越える瞬間に一行は歓声を上げた。ロシア外務省は「ソロキン書記官が『主力エンジン』となり、最も幼い旅行客は彼の3歳の娘だった」「国境が閉鎖されてから1年以上が過ぎ、旅行客の往来が中断したため帰国には非常に時間がかかり大変だった」とコメントした。

 コロナ渦で国境封鎖が長期化し、その影響で外国人観光客による「平壌エクソダス(国外脱出)」が相次いでいる。生活必需品が完全になくなるほど経済難が厳しいからだ。これに先立ちロシアのアレクサンドール・マチェコラ大使は今月8日にメディアとのインタビューで「小麦や砂糖といった基本的な生活必需品さえ買うのは大変だった」「大使館の職員たちは互いに服や靴を交換して子供たちに着せている」と現地の様子を伝えていた。

 北朝鮮と国交があるのは161の国と地域だが、平壌に常駐の大使館などを置いている国と国際機関は30ほどだ。その中で英国やドイツなど欧州の大使館は昨年の前半に閉鎖され、つい最近まで大使館を維持してきた国は10カ国ほどだという。これと関連してマチェコラ大使は今月19日、フェイスブックに平壌駐在の大使らがインドネシア大使館に集まった時の様子を伝え、中国、ベトナム、シリアなどの大使ら8人と共に撮影した写真を公開した。

 マチェコラ大使は「大使たちはこの集まりで現在の状況について意見交換した」とも伝えたが、それから6日後にロシア大使館の職員8人が撤収したのだ。ある外交筋は「国境封鎖が今後も続いた場合、これ以上は耐えられないという雰囲気が広がったようだ」「残った大使館も規模を縮小するか、運営を暫定的に中断する可能性が高い」との見方を示した。

 かつて北朝鮮外交官だった脱北民の高英煥(コ・ヨンファン)元韓国国家安保戦略研究院副院長は「1990年代の苦難の行軍当時でさえ平壌駐在の外交官たちは外交団商店で普通に生活必需品を購入できたが、今は国境封鎖の影響で生活必需品の調達が完全に途絶え、基本的な生活も成り立たなくなっているのだろう」と予想した。

 平壌は北朝鮮で最も恵まれているが、外交官たちがそこからも脱出しなければならないとすれば、平壌現地の経済難も非常に深刻との見方が当然出るはずだが、これを裏付ける具体的な兆候は確認されていない。昨年の北朝鮮の貿易総額は前年比で80%も減少したが、為替や物価は比較的安定した状態が維持されている。

 これは殺人的な経済難の中でも北朝鮮当局が平壌を特別管理しているためとみられる。北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は「調味料、化粧品、ぜいたく品など海外からの物資調達は難しいが、今すぐ飢え死にするほどの状況ではなさそうだ」と伝えた。

 しかし平壌以外の地域は非常に困難な状況が続いているという。かつて北朝鮮の政府関係者だったある脱北者は「平壌共和国という言葉がなぜ使われているか。それは体制を支える党、政府、軍の核心階層が集まって生活する平壌に北朝鮮政権が全ての物資を優先的に供給し、そのためそれ以外の地域を犠牲にしているからだ」とした上で「このような状況が今後も続けば、北朝鮮体制の耐久力は急速に弱体化するだろう」と予想した。

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