米国のジョー・バイデン政権がインド・太平洋地域で対中ミサイル網の構築を進めているのは、米国の対中封鎖網が外交・経済に続いて軍事分野にまで本格的に拡大されつつあることを意味する。専門家らは、中国けん制のための韓米日三角協力を強調している米国が、ミサイル封鎖網に韓国の参加を公式要請する可能性がある-という見方を示した。この場合、中国は防衛用システムであるTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備したときよりはるかに強く反発し、韓国を圧迫するものとみられる。韓国は、米中の間でまたも困難な選択の瞬間に直面しかねないというわけだ。

■「中国の海洋主導権の野望、受け入れることはできない」

 米国が推進している対中ミサイル網は、アジア・太平洋地域で米国の海洋主導権をけん制するための中国の戦略である「接近阻止・領域拒否(A2AD)」に対応する性格が強い。中国は1980年代から、太平洋上の島と島を結ぶ「列島線」を引いて段階的に米海軍などの活動領域を狭めようとする戦略を進めてきた。その第1段階である第1列島線は沖縄-フィリピン-マラッカ海峡を、第2列島線はグアム-サイパン-パプアニューギニア近海を連結するラインだ。中国は2020年代初頭までに第2列島線までを事実上「自分たちの庭」にしようと、努力を続けてきた。

 米国はこれに対抗して、中国本土に配備された「空母キラー」ことDF21・DF26対艦弾道ミサイルなどのミサイル基地、レーダー基地、指揮所、「遼寧」をはじめとする空母機動部隊などを精密攻撃しようという戦略を樹立してきた。米国は第2列島線までの中国進出は受け入れられないため、沖縄・フィリピンなど第1列島線に沿って中国に対する精密攻撃ネットワークを構築しようというのだ。海軍と空軍を中心として中国に対応する従来の戦略を修正し、地上発射ミサイルなどに重点を置いているといわれる。

 対中封鎖のための米国の代表的な新型地上発射ミサイルとしては、中距離巡航・弾道ミサイルや「PrSM」などがある。中距離新型巡航・弾道ミサイルは、2019年に米国が中距離核戦力(INF)全廃条約から脱退した直後に試射を行うなど、開発に拍車をかけている。射程は1000キロ以上で、沖縄やフィリピンなどから中国本土沿岸部を攻撃できる。PrSMは、現在米地上軍の代表的な戦術弾道ミサイルであるATACMSを代替するため開発中の精密攻撃兵器だ。地上目標だけでなく中国の空母機動部隊など艦艇も攻撃できるように改良される予定だ。沖縄などの在日米軍基地やフィリピンなどから中国の空母機動部隊を攻撃できるというわけだ。

■「中国の反発、THAADのときよりはるかに強いだろう」

 米国の対中圧迫は、次第により具体的かつ強硬になりつつある。トニー・ブリンケン国務長官は「中国は21世紀最大の地政学上の宿題」と語り、「用いうる全ての手段の動員」も公言した。こうした流れの中で、中国を直接狙うミサイル網というカードまで本格的に切り出しているのだ。バイデン政権が「同盟と友邦の協力」を強調しているだけあって、北東アジアの中心的パートナーである韓日に対する賛同要求は予定されているも同然だ。一部では、間もなく今月中旬に行われる国防長官・国務長官の韓日歴訪時に、対中ミサイル防御網参加問題が可視化されることもあり得る-と予想している。とりわけ、参加の可能性が高いといわれる日本の場合はそうだ。

 韓国の場合、米国はもう少し時間をかけて段階的な要請を行う可能性が高いとみられる。経済社会研究院のシン・ボムチョル外交安保センター長は「米国は時間を置いて、米日印豪4カ国同盟協議体である『クアッド』への参加のような外交的アプローチ、ミサイル防衛(MD)協力強化、そして攻撃用ミサイル配備と順を追って要求してくる可能性が高い」と語った。

 米国の要請で新型ミサイルの韓半島配備が検討される場合、中国は韓国政府が公言した「3不政策」などを突き付けて強く反発するだろうと見込まれている。3不政策は、中国のTHAAD圧迫に対して文在寅(ムン・ジェイン)政権が「米国のMDへの参加、THAAD追加配備、韓米日軍事同盟を行わない」と約束したものだ。とりわけ中国は、韓米日の中で韓国を「最も弱い環」と考えている。米国と直接対決するよりも韓国の方を戦略的ターゲットにしかねない、というわけだ。梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「2019年に中距離ミサイル配備の可能性が持ち上がったとき、中国の国営メディアは『韓国と日本が米国の“弾除け”にならないことを望む』と露骨な圧迫を加えたことがある」とし、「攻撃ミサイル配備が可視化された場合、中国の反発はTHAAD配備のときとは比較にならないだろう」と語った。

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