▲朝鮮日報のインタビューに答えるCSISのジョン・ハムリ所長

 率直に言って米国の同盟国は過去4年間、彼らが相手してきた米国を認めてこなかった。トランプ前大統領は同盟関係を戦略的資産ではなく戦力の負債と考えた。大統領になってからこのビジネスマンは韓国について3つのことしか関心がなかった。一つ目は貿易赤字、二つ目は韓国が安全保障のために支出している額、三つ目は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とのブロマンスだ。彼にとって韓国は金正恩氏を自らの1対1の出会いの場に引き出す際に有用だったに過ぎない。

 米国のシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が超党派の委員会を立ち上げ、韓米同盟についての勧告案を作成したのはこのような事情があったからだ。CSISのジョン・ハムリ所長とハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が2カ月にわたり委員会を率い、筆者はプロジェクトの責任者だった。委員としてリチャード・アーミテージ元国務副長官、ビンセント・ブルックス元在韓米軍司令官、マーク・リッパートとキャサリン・スティーブンス元駐韓米国大使、ランドル・シュライバー元国防総省次官補、ウェンディ・カトラー元米貿易代表部副代表、国家安全保障会議(NSC)のメンバーだったカトリーヌ・キャッツ氏、スミ・テリー氏、マイケル・グリーン氏などがメンバーに加わっていた。今回の報告書の目的は文在寅(ムン・ジェイン)政権末期であると同時にバイデン政権発足直後の今、同盟関係のロードマップを作成することにあった。以下はこの報告書の重要勧告だ。

 第一に委員らは過去4年間、韓米同盟の成果が低調だったと信じている。北朝鮮の脅威、中国の圧力、コロナ・パンデミック、全地球規模で民主主義の破壊が進む環境において、韓米同盟は両国の国益のためにさらに発展を続けねばならない。

 第二に韓米同盟は両国関係にとってマイナスとなる戦術的な障害を取り除かねばならない。その最初の段階として先週両国はトランプ前政権時代の無理な要求によって行き詰まっていた韓米防衛費分担金特別協定の妥結に成功した。次の段階は安全保障態勢の整備と、必要な事前の条件に基づき戦時作戦統制権(OPCON)移管問題で調整を行うことだ。

 第三に米国は信頼を強化するためより多くの対応を取らねばならない。トランプ前大統領は米国に対する北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の脅威と韓国に対する短距離ミサイルの脅威を分けて対応し、同盟国としての信頼を地に落とした。委員らは韓半島に米軍が駐留することで両国が「運命共同体」になることを最高位クラスに改めて確認し、ミサイル防衛と攻撃能力を含む韓米合同の国防力全体をアップグレードし、新たな拡張抑止力に向けた対話を始めなければならないと信じる。

 第四にCSISの委員会は韓米同盟について「弾力的アジアの回復」という目標に向け事前に協力を進めるべきことを勧告した。これは民主主義と人権、貿易の自由、経済的強要からの安全、クリーンな無線ネットワーク、透明かつ公正な開発支援、信頼できるサプライチェーンなどが尊重され、ルールに則った環境で繁栄するアジアを意味する。これらの原則を支持することは韓国の国益にも全面的に合致する。

 第五に委員会は両国の経済関係を韓米同盟だけにとどまらず、より幅広い経済ガバナンスの分野にまで拡大すべきであると信じる。デジタル貿易、気候変動、人工知能、グローバル医療分野、第4次産業革命などの分野で韓米両国は重要な基準とルールを制定する主体になることができる。

 第五に委員会は日本と韓国の双方に対して両国関係の改善を求める。韓国にとって日本との関係悪化は国内の政治的必要性にプラスになるかもしれないが、長期的にみれば韓国の戦略的な利益を害するだろう。日本は5G、サプライチェーン、ブルー・ドット・ネットワークを含むほぼあらゆる多国間構想で中心的な役割を果たす国だ。韓国は複数の多国間構想で少しずつ疎外されつつある。これは将来、韓国が徐々に、中国の気まぐれな影響力の下に一層置かれるようになることを意味する。

 最後に北朝鮮に対して委員らはトランプ政権の4年間、過去のいかなる時よりも激しく拡大した北朝鮮の核と弾道ミサイルの問題に対してやるべきことがはっきりしたと信じている。いかなる政策を選択した場合でも、北朝鮮の非核化という目標に引き続き集中しなければならない。同盟国とも緊密に協力しなければならず、軍事訓練などの同盟資産を北朝鮮との交渉カードとして使ってはならない。その第1段階として核の「凍結」を引き出すことをためらってはならない。ここからさらに北朝鮮による核物質の生産や武器の実験、それらが拡散する脅威を小さくすることにも焦点を合わせねばならない。北朝鮮に対する制裁を緩和できるとすれば、それは実質的な非核化への見返りとなる時だけだ。首脳会談は北朝鮮が武装解除という本当の決断をした時のために取っておくべきだ。

 委員長はこれらの政策勧告についてはどれも簡単ではないと考えている。それでも先週行われた米国の国務長官と国防長官による「2プラス2」訪問は、バイデン政権のスタートが順調に進んでいることを示した。韓米同盟は険しかった時期が過ぎ去り、政策の専門家たちが協力して戦略的課題や両国が共に解決すべき政策のロードマップを提示できる新たな時期を迎えつつある。

ビクター・チャ米戦略国際問題研究所(CSIS)韓国部長

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