「今世界は危険なほど台湾製半導体に依存している」

 米ブルームバーグ通信は今年1月末、当時始まったばかりの世界的な半導体供給不足についてそう指摘した。記録的な寒波で米国内での半導体生産が全面中断する中、世界の主な自動車メーカーが相次いで台湾に支援を求めたからだ。ブルームバーグは「台湾の存在が突然、無視できないほど巨大になった」と評した。

 それだけではない。米半導体工業会(SIA)は今月1日、ボストン・コンサルティング・グループと共同で発表したリポートを通じ、「台湾のファウンドリー(受託生産業者)が1年間半導体を生産できない場合、全世界のIT企業で4900億ドル規模の経済的損失が生じる」と分析した。さらに、「台湾の半導体生産能力が永久にまひすれば、世界の半導体サプライチェーンは完全に崩壊し、それを再建するのに最低3年の時間と3500億ドルの資金が必要になる」と試算した。スマートフォン、テレビ、自動車から先端兵器システムに至るまで半導体を必要としない機器はないとされる時代にあって、世界のシステム半導体の半分以上を生産する台湾の存在なくして、いかなる先端製品も成り立たなくなったのだ。

■コロナで利益得る「受託生産帝国」

 台湾が21世紀最大の「半導体帝国」へと浮上している。産業全体のデジタル転換という大きな流れの中で、コロナ以降激増したIT機器需要が受託生産を武器とする台湾の半導体産業の成長を促した。半導体業界関係者は「これまで台湾の半導体ファウンドリーは注文した製品を生産する『下請け業者』というイメージもあったが、現在は完全に優位に立った」と語った。

 台湾現地では「ファウンドリーの好況を追い風として、韓国を超える半導体大国になろう」という声が高まっている。実際に台湾は昨年、半導体生産額が前年比20.9%増の3兆2200億台湾元(約12兆4200億円)を達成。うち半分以上がファウンドリーによる生産分だった。さらに台湾積体電路製造(TSMC)は最近、「(注文が殺到し)今後は大口の注文でも値引きはない」と発表した。他のファウンドリーは値上げを予告している。そのため、ファウンドリーが占める割合はさらに高まりそうだ。値上げされたとしても、まずは半導体の確保が急務の客先は、ファウンドリーに苦言を呈することができない立場だ。

 台湾政府は世界首位のTSMCだけでなく、現時点ではシェアがさほど大きくない2-4位の企業も本格的に育成し、台湾を半導体生産の中枢としていく戦略だ。3月25日には台湾・苗栗県に現地3位のファウンドリーである力晶積成電子製造(パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチャリング、PSMC)が2780億台湾元を投じる新工場の起工式を行った。当日は蔡英文台湾総統も自ら出席し、くわ入れを行った。

 また、昨年10-12月に米グローバル・ファウンドリー(GF)を抜き、世界3位のファウンドリーに浮上した台湾の聯華電子(UMC)も15億ドルを投資し、工場拡張に着手した。TSMCは今後3年間に1000億ドルを生産拡張に投じる計画を発表した。半導体業界関係者は「10ナノメートル以下の最先端製造プロセスで絶対的優位に立つTSMCを支えとして、残る企業は車載用半導体など技術レベルが1段階低い製品の市場を奪う狙いだ」と分析した。

■韓国よりも多彩な半導体産業が共存

 台湾はファウンドリー以外にも半導体をチップに加工する半導体後工程とファブレス分野でも世界的な競争力を確保している。昨年台湾は半導体後工程分野で世界1位(シェア30%)を占め、業界代表格の聯発科技(メディアテック)が善戦したファブレス分野でも世界2位を記録した。聯発科技は昨年、スマートフォン用チップセットで米クアルコムを抜き、シェア世界1位に躍進した。

 韓国科学技術院(KAIST)電機・電子工学部の金禎浩 (キム・ジョンホ)教授は「韓国は異常なほどに後工程分野には関心がなく、最近マグナチップなどファブレス企業が中国系のプライベートエクイティファンドに買収される危機に直面した。韓国もメモリー半導体への依存度を速やかに抑えるべきだ」と指摘した。

 台湾の半導体産業にも懸念材料がある。現地では慢性的な問題点として、「五欠」という表現がある。水不足、電力不足、土地不足、労働力不足、人材不足だ。台湾は今年も冬の渇水で半導体工場が稼働中断の危機に直面し、ガソリンスタンドでの洗車や家庭用水を節約する方式でようやく稼働を維持した。天然ガスの在庫不足による電力不足、国土面積の限界による土地不足も問題点として挙げられる。さらに致命的なのが労働力・人材などの欠乏だ。台湾メディア、聯合新聞網は「半導体の崛起(くっき)を狙う中国による技術の奪取が深刻なので、中国の労働力は使わないというのが不文律だが、大規模な工場増設でそのルールも破られる兆しがある」と報じた。

オ・ロラ記者

ホーム TOP