今月初め、米海軍がウェブサイトに掲載した1枚の写真のせいで、最近中国がいきり立っています。米第7艦隊所属のミサイル駆逐艦「マスティン」のロバート・ブリックス艦長が欄干に足をかけ、斜め座りで副艦長と共に付近を航行中の中国の空母「遼寧」をのんびり眺めている写真です。

 「まともに見守る価値もないのか、それとも軍紀を欠いているのか」「蔑視の意味だな」「欄干にかけた足をへし折ってやりたい」「米軍の目には前を過ぎ去るのがおもちゃに見えたんだろう」「20年後を見ていろ」--。中国のソーシャルメディアには屈辱感に満ちたコメントが相次いでいます。

■「お前たちは相手ではない」

 空母遼寧は今月4日、沖縄本島と宮古島の間を通り、西太平洋に出た後、台湾周辺海域で軍事演習を行いました。一帯を航行していた米空母ルーズベルトの艦隊をけん制するための演習でした。

 中国国内では「遼寧がフィリピン海に入った。米軍艦はそれを見ても阻止できない」といった「愛国」宣伝だらけなのですが、米海軍が何事もなかったかのようにウェブサイトに掲載した写真1枚がそんなムードに冷や水を浴びせました。

 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は「認知戦(cognitive war)」という難解な用語まで使い、米国の意図を分析しました。中国軍に「お前たちは相手ではない」という明確なメッセージを植え付けるための高度な心理戦だというのです。

■事実上、艦載機の離着陸練習用

 空母が恐ろしいのは艦上の戦闘機のせいです。全世界どこからでも戦闘機を出撃させ、相手国を焦土化できるからです。しかし、船体が大きすぎるため、攻撃目標にもなりやすい一面があります。そのため、最先端の空母を建造しても、実際の運用能力を確保するには10年近くかかるといいます。

 遼寧は経験だけでなく、性能も大きく劣り、事実上離着陸練習用に近いと言えます。米空母は原子力推進システムを備えており、一年中燃料補給なしで航行できるが、ディーゼルエンジンを使用している遼寧は母港を出て1週間もすれば燃料を心配しなければなりません。

■「攻撃に弱いので、国際救助活動に使え」

 艦載機の離着陸システムはさらに問題です。遼寧は船首が14度ほど上に向かう「スキージャンプ台」を使用しています。空母は陸上の空港のように滑走路が長くないので、上向きの滑走路で離陸するのです。

 しかし、この方式では戦闘機に燃料や武器を十分に積み込むことができません。作戦半径や戦闘能力がそれだけ低下することになります。米国は蒸気式射出機(カタパルト)でその問題を解決しました。投石機のように飛行機を強い力で空中に打ち上げるのです。そうすれば、戦闘機はさらに多くの燃料や兵器を積み込めます。

 その上、米空母にはステルス戦闘機F35をはじめ、軍用機80-90機が搭載されます。これに対し、中国はステルス機がなく、艦載機の数もかなり不足しています。

 米議会調査局(CRS)は今年3月初め、中国海軍の現代化に関する長文の報告書を発表しました。

 報告書は中国が駆逐艦などを大幅に増やしていることには強い懸念を示しました。しかし、空母については、「米軍の攻撃にあまりに弱く、米国以外の他国に勢力を誇示したり、国際救助活動を行ったりするために使われるのではないか」と指摘しました。

崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長

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